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がん治療応用をめざしたテロメア研究の新展開(New modes of telomere research aimed for cancer therapy)GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年07月26日

開催日時: 2010年07月26日 18:00-19:00
開催場所: 2号館2階 小講義室
講師: 清宮 啓之
所属: 財団法人癌研究会 癌化学療法センター分子生物治療研究部
(Cancer Chemotherapy Center,Japanese Foundation for Cancer Research)
演題: "がん治療応用をめざしたテロメア研究の新展開(New modes of telomere research aimed for cancer therapy)"GCOE特別セミナー(医科学教育セミナー)
概要:

テロメアはTTAGGGの反復配列DNAとその結合蛋白質で構成され、染色体末端の保護役として機能する。DNA複製のたびに生じるテロメアの短縮(いわゆる末端複製問題)は、細胞の分裂可能回数に一定の上限を設け、細胞老化もしくは細胞死を誘導することにより発がんを阻止する。約90%のがん細胞では、テロメラーゼによりテロメアが再生されるため、無限の分裂増殖が可能となる。我々はこれまでに種々のテロメラーゼ阻害剤を創製し、これらの制がん効果を実証してきた。米国ではすでに、テロメラーゼ阻害剤Imetelstatの臨床試験が進行している。我々はさらに、タンキラーゼと呼ばれるポリ(ADP-リボシル)化酵素が、テロメラーゼ阻害剤の耐性因子として機能することを報告してきた。タンキラーゼの阻害は、テロメラーゼ阻害剤の効果を増強するばかりでなく、Wntシグナルを遮断し、あるいはがん抑制遺伝子BRCA1/2機能欠損とのsynthetic lethalityを誘導することから、新たながん治療戦略として期待されている。一方、我々はがん細胞のテロメアに見られる「個性」をデータベース化し、これを利用した薬剤反応性研究にも取り組んでいる。本セミナーではこれらの研究を概説するとともに、最近明らかにした、細胞分裂異常に対するテロメア結合蛋白質の新たな関与を紹介したい。

世話人: 山梨 裕司(腫瘍抑制分野)
井上 純一郎(分子発癌分野)