English
Top

MRIを用いた躯幹部生体画像法

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年07月06日

開催日時: 2010年07月06日 17:00-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館2階 セミナー室
講師: 桐生 茂 医学博士
所属: 東京大学医科学研究所付属病院 放射線科
演題: MRIを用いた躯幹部生体画像法
概要:

MRIは核磁気共鳴現象を用いた断層撮影法であり、X線CTに比較して、電離放射線被曝がなく非侵襲的である、軟部組織コントラスト分解能に優れている、任意方向の断層像が撮影可能などの特徴がある。さらに、パルスシーケンスの改変により様々な生体内現象を強調した画像の撮影が行え、中枢神経領域ではこれらの特徴を活用して様々な生体現象の画像化が試みられてきており、我々は躯幹部におけるMRIを用いた生体現象の画像化について取り組んできた。
 拡散強調画像は1対の逆方向の傾斜磁場からなるMPGパルスを用いることにより、プロトンの拡散現象を可視化する手法で、臨床では急性期脳梗塞の検出に用いられている。より小さいMPGパルスを用いることにより、拡散現象よりもマクロな現象である潅流現象を選択的に抑制することが可能であり、これを肝臓に応用して小病変の検出の妨げとなる肝内脈管信号を抑制し、微小病変の検出が向上することを示した。また炎症性消化管病変において拡散現象が低下することに注目し、若年者の罹患率が高い炎症性腸疾患において、拡散強調画像を用いることにより非侵襲的に活動性病変の局在を示せることを報告した。電離放射線被曝がない点はMRIによるヒト生体の連続撮影を可能にする。胸部の呼吸運動をMRIで連続的に撮影を行い、横隔膜のバイオメカニクスを解析し、成人呼吸促迫症候群の治療において有用性が論じられている体位変換における呼吸運動の差異を画像的に明らかにし、定量的に評価した。また鎌状赤血球症モデルのノックアウトマウスにおいて、肺梗塞の生じる前後の呼吸運動の差異を定量的に評価できることを示した。本セミナーではMRIを用いた躯幹部における生体現象の画像化についてご紹介したい。

世話人: ○今井 浩三(癌制御分野 教授)
  森本 幾夫(免疫病態分野 教授)