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脳由来神経栄養因子の分泌源を探る

学友会セミナー

学友会セミナー:2010年02月16日

開催日時: 2010年02月16日 16:00-17:00
開催場所: 1号館2階セミナー室
講師: 松田 尚人
所属: 生理学研究所 細胞器官研究系 生体膜研究部門
演題: 脳由来神経栄養因子の分泌源を探る
Source of Secreted Brain-derived Neurotrophic Factor
概要:

脳由来神経栄養因子BDNFは脳の発達とシナプス可塑性に必須の蛋白質である。BDNFの機能発現にはニューロンから分泌されることが必要で、その分泌異常は精神疾患と関連することが知られている。しかしBDNFがシナプス前細胞から分泌されるのか、あるいは後細胞からなのか、どの程度の強い神経活動が分泌を引き起こすのかは未知であった。そこで演者は、BDNF分泌を高感度に検出する蛍光蛋白プローブを海馬培養神経細胞に発現させ、BDNF含有小胞のイメージングにより、分泌に必要な神経活動と分泌部位を探った。開口放出に伴う蛍光変化を全反射顕微鏡で高速イメージングし、樹状突起から分泌されたBDNFが拡散してゆく瞬間を捉えることに成功した。BDNF放出は分泌小胞と細胞膜間で形成される融合細孔のサイズで精緻な制御を受けており、強い刺激条件下でも軸索からはほとんど分泌されないことを見出した。従って、BDNFの神経活動依存的な分泌は主として樹状突起で起こり、シナプス伝達増強の引き金を引くのはシナプス後細胞であると考えられた。今後はこの知見を元に、BDNFの分泌源を神経回路上にマッピングしてゆき、高次脳機能や精神疾患との関わりを明らかにしたいと考えている。

世話人: ○斎藤春雄、真鍋俊也