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成体嗅球における新生顆粒細胞のシナプス発達

学友会セミナー

学友会セミナー:2009年12月14日

開催日時: 2009年12月14日 16:00-17:00
開催場所: 1号館 2階会議室
講師: 片桐大之
所属: Dept. Neurology, Children’s Hospital Boston, Harvard Medical School
(ハーバード大学ボストン小児病院)
演題: 成体嗅球における新生顆粒細胞のシナプス発達
Dynamic development of the first synapse in adult-born neurons
概要:

脳の大半の神経細胞は生後まもなく作り終えられるが、嗅球での顆粒細胞は生涯を通じ、匂い刺激の程度に応じて新生される。これは、新生顆粒細胞が既存の神経回路網に付け加わり、神経回路網が「可塑的」に再構築されることを示唆する。嗅球での顆粒細胞には、入力に応じた3つの興奮性グルタミン酸作動性シナプスが存在する。その中でも成体マウスの嗅球の新生顆粒細胞に最初に形成されるシナプスに着目し、シナプスの発達過程が神経回路網の再構築に寄与しているかを電気生理学的に考察した。新生細胞が完全に成熟する前の、新生細胞の生存を決定づける臨界期内で、AMPA受容体を介する電流の振幅に対するNMDA受容体を介する電流の振幅の比はピークに達し、その後減少した。またグルタミン酸の放出部位も臨界期内で一つから複数になり、新生細胞の成熟と伴にこの数が再び一つになることが示された。この興奮性シナプス伝達のLTPの誘導にはシナプス前終末の変化が伴われるが、LTPの大きさが、成熟に伴う放出部位の減少と同じ時間経過で減弱することが観察された。このシナプスは主に嗅皮質から投射された神経線維と顆粒細胞との間で形成されることから、嗅皮質からのシグナルが嗅球内の神経回路再構築に重要な役割を果たしていると結論した。

世話人: ○斎藤春雄、真鍋俊也