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GCOE global education seminar"直鎖状ポリユビキチン化:NF-κB活性化に必須な新たなユビキチン修飾系の発見"

学友会セミナー

学友会セミナー:2009年02月06日

開催日時: 2009年02月06日 18:00~19:00
開催場所: 1号館2階会議室
講師: 岩井 一宏 教授
所属: 大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科
演題: GCOE global education seminar"直鎖状ポリユビキチン化:NF-κB活性化に必須な新たなユビキチン修飾系の発見"
概要:

NF-κBは種々の刺激によって活性化される転写因子であり、炎症性サイトカインや、細胞接着因子、抗アポトーシスタンパク質群の遺伝子の転写を誘導して、免疫応答、炎症、細胞接着の誘導、抗アポトーシス作用などの多彩な生理作用を発揮する。さらに、その活性調節異常がアレルギー、ガンを含め幾多の疾患に関与していることが知られている。

NF-κBの活性制御にはポリユビキチン化が多彩な様式で関与していることが報告されてきた。これまで知られていたポリユビキチン鎖は、ユビキチンのリジン残基のε-アミノ基にユビキチンのC末端がイソペプチド結合して形成される分岐鎖状の構造体である。IκBを分解に導くのはユビキチンのリジン48を介したポリユビキチン鎖(K48鎖)であり、RIP1やNEMOへのK63鎖の付加はシグナル分子との結合モチーフとして機能して、NF-κBを活性化へと導く。

我々はHOIL-1LとHOIPからなる複合体型のLUBAC(linear ubiquitin chain assembly complex)ユビキチンリガーゼがリジン残基ではなく、ユビキチンのN末端のメチオニンのε-アミノ基とユビキチンのC末端をペプチド結合させ、直鎖状のポリユビキチン鎖を選択的に生成することを報告してきた。これまで、分岐鎖状ポリユビキチン鎖のみが知られていたので、ポリユビキチン化の解析には、ユビキチンのN末端タグを付加したユビキチンが用いられてきた。しかし、LUBACはタグ付加ユビキチンをポリユビキチン化出来ないので、それらの解析では直鎖状ポリユビキチン鎖の役割は見逃されてきた可能性が考えられた。

そこで今回、LUBACの生理的役割の解析を進め、LUBACはTNF-α等の炎症性サイトカイン依存的にIKK複合体の構成成分であるNEMOに直鎖状ポリユビキチン鎖を付加することでNF-κBを活性化することを見出した。また、MEFを用いた解析ではTNF-α依存的なNF-κB活性化にはK63鎖ではなく、直鎖状ポリユビキチン鎖がより深く関与していること、K63鎖はJNKやERKの活性化への関与も報告されているのに対し、直鎖状ポリユビキチン鎖はNF-κBを特異的に活性化することを観察している。ある種のガンや自己免疫疾患でHOIPの過剰発現が報告されていること等も踏まえ、本セミナーでは、疾患への関与も含め、直鎖状ポリユビキチン鎖によるNF-κB活性化の意義について論じたい。

世話人: ○山梨裕司、村上善則