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GCOE global education seminar"遺伝統計学の論理"

学友会セミナー

学友会セミナー:2008年12月11日

開催日時: 2008年12月11日 16:00~17:00
開催場所: 1号館「講堂」
講師: 鎌谷直之
所属: 情報解析研究所
理化学研究所ゲノム医科学研究センター
演題: GCOE global education seminar"遺伝統計学の論理"
概要:

ヒトゲノムの解読、連鎖解析などを通じ、疾患の遺伝的原因の解明が進んできたが、2002年から理化学研究所によって開始された全ゲノム関連解析(GWAS: genome-wide association study)により、ほとんどの疾患の遺伝的原因が数年以内に解明される可能性がある。このような解析が可能になった理由は個人の膨大な数の多型情報を取得する技術が進歩したことと、遺伝統計学的解析の進歩による。
生物学的データを数学を用いて解析する科学分野は19世紀の後半にBiometricsとして開始された。しかし、メンデルの法則の再発見以降Biometrics学派はメンデル学派と激しく対立した。Biometrics学派は現実世界に真なる法則の存在を認めず、データを数学モデルにより解析することで帰納的に研究を進めたのに対し、メンデル学派はメンデルの法則を現実世界で真なる法則として認めるという演繹的な手法を取ったからである。
 この二つの手法の対立は現在でも続いており、前者は数理統計学として、後者は遺伝統計学としてそれぞれ有用性を発揮している。遺伝的データの解析に遺伝統計学が有効な理由は、遺伝継承法則が安定した確率を与えるからである。それに対し、経済やその他のデータには現実世界に安定した確率を仮定することが現実的ではないため、帰納的方法がより有効であると考えられる。これらの違いをよく認識して遺伝統計学の論理や手法を学ぶ必要がある。

世話人: ○中村祐輔、醍醐弥太郎