Research Project

研究公正

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)・研究公正高度化モデル開発支援事業
第1期:「倫理審査の質向上を目的とした倫理審査委員向け教材の開発」(研究代表者:神里彩子、平成28年度~平成30年度)

第2期:「倫理審査委員会にかかわる人材育成のための統合的プログラムの開発」(研究代表者:江花有亮、研究分担者:神里彩子、令和元年度~令和3年度)

1)倫理審査委員向け動画教材の制作(第1期・第2期)

「質の高い倫理審査」には、倫理審査委員の審査能力の向上が重要であり、それには委員への継続的、且つ、質の高い教育研修の提供が必要です。しかし、限られた人材及び財源の中で委員に教育研修を行うことは容易ではありません。そのため、年1回程度の座学研修や外部セミナー等への参加機会の提供という形で実施している機関が多く、倫理審査委員研修の形骸化が危惧されています。

このような状況を生じさせている理由の一つに、倫理審査委員向けに特化した研修用教材が日本にほとんどないことが考えられます。 そこで、当研究室では倫理審査委員向けの倫理研修用動画教材REC EDUCATIONプログラムを制作することにし、すでに多数の動画教材を無料公開しています。
2022年3月末までに約740の倫理審査委員会、2100名の方ご登録いただき、委員のみならず事務局担当者の間でも広く利用していただいています。
詳しくはREC EDUCATIONのページをご覧ください。

  • 倫理研修用動画教材プログラム&「 一般の立場 」委員バンク
  • 倫理審査委員のための倫理研修用動画

2)研究者向け動画教材の制作(第2期)

2018年に「臨床研究法」が施行され、また、2021年には「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」及び「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を統合した新指針「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が施行されました。このように昨今、臨床研究のルールが頻繁に変わっており、複雑化しています。
そこで、当研究室では研究者向けの倫理研修用動画教材REC EDUCATIONプログラムも制作し、無料公開しております。研究者向けの動画教材では、研究者に必ず知っていただきたい内容を中心に構成し、さらに、研究者が誤解しそうなポイントについても説明しています。
動画教材は2022年3月末までに約2800名の方にご登録いただき、広く活用されています。
詳しくはREC EDUCATIONのページをご覧ください。

  • 人を対象とする生命科学・医学系研究を行う研究者のための倫理研修用動画

3)出前研修の実施(第1期・第2期)

倫理審査委員向け動画教材では、倫理審査委員会の場において議論するための「議題」を設定しています。しかし、実際上、倫理審査委員会事務局が議論をファシリテートすることは容易いものではないこと、また、委員からの質問に的確に回答できるか不安を抱えていることが想像されました。そのため、希望のあった機関の倫理審査委員会にREC-EDUCATION事務局のメンバーが出向いて研修の支援を行う「出前研修」を行うことにしました。
多くのお申込みをいただき、第1期には全国の倫理審査委員会にて計16回、第2期には計10回、延べ350名以上の委員に対して出前研修を行いました。

出前研修の様子

出前研修の様子

4)CReP研修支援セミナーの開催(第2期)

AMED研究公正高度化モデル開発支援事業では、倫理審査事務局の方等を倫理審査専門職として認定する制度Certified Research Ethics Committee Professionals(CReP)が設立されました。当研究室は、CReP取得者へのスキルアップ教育として「CReP研修支援セミナー」を2019年度から担当させていただきました。
CReP取得者が教育研修を実施できる能力を持ち、倫理審査委員へ継続的な教育を行うことができれば倫理審査の質の向上につながるものと考えます。「CReP研修支援セミナー」は、CReP取得者が各自の倫理審査委員会の委員に対して研修ができるように支援することを目指したセミナーですが、同時に、CReP取得者が互いに情報交換する場にもなりました。

CReP研修支援セミナーの様子

 

CReP研修支援セミナーの様子

CReP研修支援セミナーの様子

5)「一般の立場」委員向け勉強会の開催(第2期)

「臨床研究法」や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」では、倫理審査委員会の構成要件・成立要件の一つに、「一般の立場から意見を述べることのできる者」(以下、「一般の立場」委員)が入っていることを挙げています。そのため、これら法律や指針に基づく倫理審査委員会には「一般の立場」委員が入っていますが、ご自身の審査に不安を抱えている方は多くいます。そこで、私たちは「一般の立場」委員に対する勉強会を2019年度は対面、コロナ禍における2020年度及び2021年度はオンラインで開催し、「一般の立場」委員としての役割や審査の観点、インフォームド・コンセントの手続きなどについて学んでいただきました。
受講者からは、「受講前と比べて不安感がなくなった」「一般の立場での感覚を大事にするべきだということがよくわかった」「やる気が出た」といった声があり、受講者の倫理審査委員会での活躍が期待されます。

2019年度勉強会の様子

2019年度勉強会の様子

6)「一般の立場」委員バンクの設置

「一般の立場」委員の退任があったり、人数を増やしたいと考えた場合、倫理審査委員会事務局は「一般の立場」委員として適任な人を探しますが、難航することも多々あります。一方で、私たちは「一般の立場」委員向け勉強会を通じて、誠実且つ意欲的に倫理審査に取組んでいる「一般の立場」委員が多くいることを知りました。そこで、「一般の立場」委員向け勉強会を受講された方の中で、将来的に条件が合えば他の倫理審査委員会の委員を引き受けてもよいと思う方を登録する「『一般の立場』委員バンク」を設立しました。「一般の立場」委員を求人している倫理審査委員会事務局からREC-EDUCATION事務局に依頼があった場合、バンク登録者にその情報をお知らせしています。2022年3月現在、合計67名に登録していただいており、すでに複数名の方が求人のあった倫理審査委員会において「一般の立場」委員として活動されています。

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東京大学 医科学研究所 生命倫理研究分野