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生命倫理研究分野は、2017年2月に設置された新しい研究室です。「現在そして未来の人々が幸せになる医学・医療について考える」をテーマに、人文・社会科学の観点から研究を進めています。

医学そしてその成果である医療の進歩は、人々の生命・健康の保持・増進に貢献し、私たちはその恩恵にあずかっています。そして、病気で苦しんでいる人がいる限り、医学および医療が発展していくことが望まれます。しかし、同時に、医学や医療は、社会の中で行われる営みであり、社会と調和しながら育まれるべきものです。
私たちの研究室では、次の2つの視点をもちながら、医学や医療は社会の中でどのように発展していくべきか、また、発展していくためには何が必要かについて、社会や研究者に選択肢を示すことを目指して研究しています。

1.研究の発展を支える人(研究対象者)や動物のためにできることはないか

例えば、一つの薬が誕生するには、基礎研究⇒非臨床(動物)試験⇒治験(第Ⅰ相~第Ⅲ相)という流れを経ることになります。これは、研究のために試料・情報を提供してくださる人や、治験に参加してくださる人など、たくさんの人(研究対象者)に支えられて成り立つものです。また、多くの実験動物の犠牲も伴います。研究に協力してくださる人たちの生命・身体の安全、そして、権利やお気持ちのために、また、実験動物の福祉のために私たちにできることはないか考えます。

2.先端的な医学研究や医療は、現在及び未来の人々にどのような影響を及ぼす可能性があるか

先端的な医学研究や医療は、新しい倫理的・法的・社会的問題(ELSI)を生じさせる場合があります。例えば、1978年にイギリスではじめて行われた体外受精技術を用いた不妊治療は、子どもを持つことや家族の概念について新しい考え方を示しました。また、人の受精卵を用いた研究も可能にしたことから、「受精卵の地位」という新たな問題を提起しました。そして、その応用編として、現在、人の受精卵についてゲノム編集を行うことの倫理的・法的・社会的問題が生じています。
先端的な医学研究や医療が、現在の人々、そして、まだ存在していない将来世代の人々にどのような影響をもたらす可能性があるか考えます。

研究テーマ

当研究室では、現在、次のテーマを扱っています。

  • 被験者の保護
  • 倫理審査の質の向上
  • 人と動物のキメラの作製の倫理的課題
  • 生殖補助医療の倫理的課題
  • 出生前診断・着床前診断の倫理的課題
  • ヒト胚研究の倫理的課題
  • ゲノム編集の倫理的課題
  • 実験動物の福祉

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東京大学 医科学研究所 生命倫理研究分野