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関節リウマチにおける間質性肺炎リスク遺伝子領域の同定
-肺線維化に関わる胸部CT画像パターンと関連-

関節リウマチにおける間質性肺炎リスク遺伝子領域の同定
 ー肺線維化に関わる胸部CT画像パターンと関連ー

Annals of the Rheumatic Diseases2020年8月1日オンライン)
著者:Yuya Shirai1,2,#, Suguru Honda3,#, Katsunori Ikari3, Masahiro Kanai1,4, Yoshito Takeda2, Yoichiro Kamatani5,6, Takayuki Morisaki7,8, Eiichi Tanaka3, Atsushi Kumanogoh2,9,10, Masayoshi Harigai3, Yukinori Okada1,6,10,11,*.(* 責任著者, # 同等貢献)
【所属】 1 大阪大学大学院医学系研究科 遺伝統計学、 2 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学、 3 東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター、 4 ハーバード大学医学部 Department of Biomedical Informatics、 5 東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 複雑形質ゲノム解析分野、 6 理化学研究所生命医科学研究センター 統計解析研究チーム、 7 東京大学医科学研究所 癌・細胞増殖部門 人癌病因遺伝子分野、 8 東京大学医科学研究所 バイオバンク・ジャパン、 9 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 感染病態、 10 大阪大学先導的学際研究機構 生命医科学融合フロンティア研究部門、 11 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 免疫統計学
Association of the RPA3-UMAD1 locus with interstitial lung diseases complicated with rheumatoid arthritis in Japanese.
大阪大学大学院医学系研究科の大学院生 白井雄也 さん(博士後期課程)、岡田随象 教授(遺伝統計学)らの研究グループは、東京大学大学院新領域創成科学研究科 鎌谷洋一郎教授らと共同で東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターにおけるIORRAコホート※1、バイオバンク・ジャパン※2により収集された日本人の関節リウマチ患者5千人を対象としたヒトゲノム情報解析により、関節リウマチに合併する間質性肺炎に関わるRPA3-UMAD1遺伝子領域における遺伝子多型※3を同定しました(図1)。間質性肺炎は関節リウマチの代表的な合併症の一つであり、合併することで死亡率が上昇することから、関節リウマチ診療における重要な課題の一つとなっています。

今回、本研究グループは、各コホートの関節リウマチ患者における間質性肺炎の合併の有無を対象にゲノムワイド関連解析(GWAS)※4を行い、メタ解析※5により個別のGWASの結果を統合することで、間質性肺炎合併のリスクとなる遺伝子多型が7番染色体上に存在することを明らかにしました。この遺伝子座位にはRPA3、UMAD1の二つの遺伝子が存在していました。さらに、胸部CT画像パターンによる層別解析※6により、今回同定した遺伝子多型が肺の線維化を反映する画像パターンと関連が強いことを示しました。本研究成果は、関節リウマチに合併する間質性肺炎の病態解明に貢献することが期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Annals of the Rheumatic Diseases」に、8月1日(土)午前0時(日本時間)に公開されました。

※1 IORRAコホート
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターで行われている、リウマチ性疾患の大規模前向きコホート研究であり、患者のゲノムDNAや血清サンプルのほか、リウマチ性疾患の日常診療に基づいた詳細な臨床情報を集積している。

※2 バイオバンク・ジャパン(BBJ:BioBank Japan)
日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンクで、ゲノム解析が終了した人数は約20万人とアジア最大である。オーダーメイド医療の実現プログラム(実施機関:東京大学医科学研究所・理化学研究所生命医科学研究センター、現在は「ゲノム研究バイオバンク事業」として引き継がれている)を通じて実施され、ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へのデータ提供や分譲を行っている(https://biobankjp.org/index.html)。

※3 遺伝子多型
遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差であり、集団中に1%以上の頻度で存在するものと定義されることが多い。

※4 ゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome Wide Association Study)
ヒトゲノム配列上に存在する数百万か所の遺伝子多型とヒト疾患との発症の関係を網羅的に検討する、遺伝統計解析手法。数千人~百万人を対象に大規模に実施されることで、これまで1,000を超えるヒト疾患に対する遺伝子多型が同定されている。

※5 メタ解析
検定における検出力の増加や各研究における偏りの調整を目的に、複数の研究結果を統合する解析手法。

※6 層別解析
収集したデータを診断基準や疾患病態に基づきグループ分けした上で、各グループで解析を行うこと。

 

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