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造血幹細胞の老化メカニズムを発見
-若返りには環境の変化のみでは限界があることを実証-

解説

東京大学医科学研究所の栗林和華子特任研究員、大島基彦助教、岩間厚志教授(幹細胞分子医学分野)らの研究グループは、加齢造血幹細胞と無処置移植に着目し、世界で初めて、加齢造血幹細胞の遺伝子発現(トランスクリプトーム、注)の変化が加齢に伴うニッチの形質変化に大きく起因することを明らかにしました。一方で、加齢造血幹細胞の機能は骨髄ニッチに関係なく持続していることも分かりました。また、DNAメチル化の解析から、加齢に伴うエピジェネティックな変化は、ニッチが変わっても有意な変化はなく、幹細胞機能により強い影響力を持つ可能性が示唆されました。

本研究成果により、造血システムの老化を制御する分子基盤が明らかとなり、加齢に伴う血液疾患の治療法開発に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2020年11月24日(米国東部時間)、米国の国際医科学雑誌「Journal of Experimental Medicine」オンライン版に公開されました。

(注)トランスクリプトーム:
細胞中に存在する全ての遺伝子転写産物 (mRNA) を含んだ集合。特定の状況下における細胞の遺伝子発現プロファイルの網羅的な情報。
 

プレスリリース

論文情報

"Limited rejuvenation of aged hematopoietic stem cells in young bone marrow niche"

Journal of Experimental Medicine オンライン版 2020年11月24日(米国東部時間) doi:10.1084/jem.20192283

Wakako Kuribayashi, Motohiko Oshima, Naoki Itokawa, Shuhei Koide, Yaeko Nakajima-Takagi, Masayuki Yamashita, Satoshi Yamazaki, Bahityar Rahmutulla, Fumihito Miura, Takashi Ito, Atsushi Kaneda, Atsushi Iwama

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