2007年1月29日
疾患プロテオミクスラボラトリー

尾山 大明
研究内容
疾患プロテオミクスラボラトリーは生命システムや疾患のメカニズムをタンパク質レベルで明らかにすることを目的として設立された研究施設で、質量分析を中心とする研究所向けの支援業務も併せて行っています。我々のグループでは超低流速の液体クロマトグラフィーと高分解能の質量分析計がon-lineで接続されたnanoLC-MS/MSシステムを用いて、細胞内タンパク質の包括的な同定・計測に基づいた新規の生命制御システムの発見を目指しています。現在は主に以下の二つのテーマに関して研究を進めています。
- 各種疾患のメカニズム解明に向けたチロシンリン酸化ネットワークに関する動態解析技術の確立
シグナル伝達において主要な役割を果たすチロシンリン酸化に焦点を当て、定量プロテオミクスの技術を用いて時間分解能の高いダイナミクスデータを取得し、計算機によるネットワーク解析を通して新規の制御機構の発見を目指します。また、医科学研究所内外の各種疾患解析をリードするグループとの共同研究により、疾患ごとのチロシンリン酸化ネットワークの特性の理解と創薬ターゲットの探索に向けた解析システムの確立を進めています。 - 包括的な転写開始領域及び低分子タンパク質コード領域情報に基づく翻訳開始システムの解明
ヒトゲノム配列の解読と転写産物の網羅的な解析により、ゲノム上での転写開始領域に関する情報が急速に蓄積されつつあります。我々は低分子タンパク質に焦点を絞ったショットガンプロテオーム解析により、mRNAの5’-端非翻訳領域に由来する翻訳産物を直接同定することに成功しました。各種細胞からのデータ集積を通して、ヒトプロテオームの真の全体像の解明に向けた翻訳開始システムに関する考察と検証を行っています。

