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研究分野紹介

2005年12月

組織の発生・再生の原理の解明をめざして。

再生基礎医科学寄付研究部門
客員教授 渡邉すみ子
感覚器は高度に機能化した中枢神経の一部であり、誘導、投射のモデルとして外界の情報を脳の特定領域で再構成する機構とその形成過程の解明は発生学、神経科学の重要な命題である。一方で、高齢化社会を迎え感覚器の発生の分子メカニズムを理解し、再生につなげていく事の重要性が指摘されている。私達はマウスとゼブラフィッシュを用いて網膜がどのように発生し、再生しうるのか検討しているが、ゼブラフィッシュは生涯にわたり網膜の細胞が新生されるのに対し、哺乳類の網膜は発生を終えると新生されない。すなわちゼブラフィッシュでは生涯にわたり網膜の幹細胞が存在するが、哺乳類では幹細胞が失われているのか、あるいはサイトカインなどの環境因子により再生できない状況になっていると考えられる。
老化は幹細胞の消失、あるいは何らかの機能不全に影響している可能性が指摘されている。例えば老化の促進に重要な働きをすると考えられている活性酸素が血液幹細胞を減少させるという報告がされている。また幹細胞をとりまく環境に発現する分子の量的、質的変化も幹細胞の機能喪失に重要であるという考えもある。組織の発生・再生を幹細胞やその環境要因に焦点をあて、脊椎動物の進化、個体の老化という様々な軸から検討し、さらに数学的処理を考えるチームと協力しながらその原理を見つけだしたいと考えている。
医科研の裏門脇にさきほこる桐の花
四季折々に美しい医科研では絢爛たる桜の季節が終わると5月は桐の花が咲き乱れ、続いてつつじが満開となる。植物のカルスは全能性に脱分化した細胞塊であることが良くしられているが、この形成は植物ホルモンにより制御されている。植物の形態形成は見事なダイナミズムをもち、しかも長年にわたり繰り返される。幹細胞、老化、という概念が植物ではどのように理解されているのだろうか。動物と共通の普遍原理はあるのであろうか?