2005年12月
先端的ゲノム・プロテオーム解析を応用したオーダーメード医療の実現化をめざして
先端臨床プロテオミクス共同研究ユニット
特任助教授
醍醐 弥太郎
特任助教授
醍醐 弥太郎
これまでのヒト疾患遺伝子解析研究は、限られた数の遺伝子・遺伝子産物の異常を手がかりとして、その発生機構を組み立てていく方向で進められてきました。しかしながら、近年のゲノム・プロテオーム解析的手法の発達により、ゲノムワイドな遺伝子・遺伝子産物の発現レベルの変化に基づき疾患の発生機構の全体像をより網羅的・体系的に把握することが可能となり、蓄積された膨大な量の遺伝子発現情報・機能情報から患者ごとの病態を規定する要因が明らかになりつつあります。これらの研究成果は、疾患を早期に発見する、もしくは薬剤投与前に患者個人の体質や病態・薬剤感受性をもとにその効果や副作用を予測し最適な治療(薬の種類や量)を患者に与えるオーダーメイド医療の実現と新規治療法の開発に応用されることが期待されます。
概要と研究活動の現況
当ユニットは医科学研究所と島津製作所、凸版印刷との共同研究ユニットとして昨秋、医科研内に開設されました(クレストホール1F、旧ゲノム解析センター1F)。現在、ゲノム解析・プロテオーム解析の二つのグループが連携をとり、約10名の産学官連携研究員がオーダーメイド医療実現化のため、疾患に関連するタンパク質や遺伝子の基礎研究を包括的に進めています。このような総合的な産学連携体制のもと、臨床応用を含む社会還元を常に念頭に置きながら主にがんや各種疾患の関連遺伝子の動態をタンパク質レベルで解析し疾患の静的・動的状態の機構を明らかにするとともに、医療現場で利用可能な診断・治療の標的となるバイオマーカーの同定を目指しています。同時にゲノム情報・プロテオーム情報・疾患関連情報などを統合するデータベースの構築と同定されたバイオマーカーを応用した各種臨床診断システムの構築を進める予定です。
