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DNAメチル化酵素DNMT3AおよびDNMT3Bの特異的機能の発見
-哺乳類の発生過程やがん発症のメカニズム解明に貢献-

DNAメチル化酵素DNMT3AおよびDNMT3Bの特異的機能の発見
-哺乳類の発生過程やがん発症のメカニズム解明に貢献-

Nature Communications(6月24日オンライン版)DOI10.1038/s41467-020-16989-w
Masaki Yagi#, Mio Kabata#, Akito Tanaka, Tomoyo Ukai, Sho Ohta, Kazuhiko Nakabayashi, Masahito Shimizu, Kenichiro Hata, Alexander Meissner, Takuya Yamamoto*, Yasuhiro Yamada* (#:共同第一著者、 *:共同責任著者)
Identification of distinct loci for de novo DNA methylation by DNMT3A and DNMT3B during mammalian development
 
DNAのメチル化は哺乳類の個体発生に必須であり、その異常は白血病などのがん発生の原因となることが知られています。八木正樹 研究員(ハーバード大学、元東京大学医科学研究所)、蒲田未央 特定職員(京都大学iPS細胞研究所(CiRA))、山本拓也 准教授(京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、同高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi))、山田泰広 教授(東京大学医科学研究所)らの研究グループは、多能性幹細胞(注)における遺伝子破壊技術と網羅的なDNAメチル化解析技術を組み合わせることにより、DNAメチル化酵素であるDNMT3Aと DNMT3Bの特異的な標的部位の同定に世界で初めて成功しました。

個体発生過程において、DNMT3Aは分化関連遺伝子を、DNMT3BはX染色体遺伝子を特異的に制御していることが分かりました。さらに本研究で同定したDNMT3の特異的標的遺伝子は、DNMT3遺伝子に変異を持つがんや疾患においてもメチル化に異常があることが分かりました。

本研究成果は、哺乳類の発生過程でのDNAメチル化制御機構の一端の解明に繋がり、さらにはDNAメチル化異常を有するがん・疾患の発症メカニズムの解明や新規治療戦略の確立に貢献できる可能性があります。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」(6月24日オンライン版)で公開されました。

(注) 多能性幹細胞
ほぼ無限に増殖することができ、様々な細胞へと分化する能力を有する細胞を指す。代表的な多能性幹細胞として、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)が挙げられる。


プレスリリース