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がんの多様な進化をシミュレーションで理解する
-スパコンSHIROKANEを用いてがん治療戦略開発のための数理的基盤を構築-

がんの多様な進化をシミュレーションで理解する
-スパコンSHIROKANEを用いてがん治療戦略開発のための数理的基盤を構築-

PeerJ(2020年4月08日オンライン版) DOI番号:DOI 10.7717/peerj.8842
Atsushi Niida*, Takanori Hasegawa, Hideki Innan, Tatsuhiro Shibata, Koshi Mimori and Satoru Miyano 
A unified simulation model for understanding the diversity of cancer evolution.

がんは細胞のゲノムに変異が蓄積し増殖能力、悪性度の高い細胞が進化的に選択された結果生じる進化の病気だと捉えることができます。また、がんはその進化能力の高さゆえ、治療によって変わった環境にも適応し、容易に治療抵抗性(注1)を獲得してしまうので、がんの進化原理の理解は治療戦略を練る上でも重要な問題です。

これまでのゲノム研究によってがんの進化は大きく分けて4つの進化様式があることが分かっていましたが、それらがどのような条件下で実現されているかについてはよく分かっていませんでした。そこで東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野 新井田厚司 講師、同ヘルスインテリジェンスセンター健康医療データサイエンス分野 長谷川嵩矩助教(研究当時)、同ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野柴田龍弘 教授、同ヒトゲノム解析センターDNA情報解析分野宮野悟 教授 (研究当時)らの研究グループは、多様な進化様式を実現しうる統一的進化シミュレーションモデルを構築し、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータSHIROKANEを用いて様々な条件をふって超並列シミュレーション(注2)を行うことで個々の進化様式が実現される条件を決定しました。本研究はがんの進化を理解する上での数理的な基盤を提供することで、今後のがんの治療抵抗性の理解及びそれに基づいた治療戦略の開発に資すると期待されます。本研究成果は、欧米の生命科学誌「PeerJ」(オンライン版)に、4月08日に公開されました。

(注1)治療抵抗性
がんが抗がん剤治療に抵抗性を示すこと。進行がんで一時的に治療が効いて腫瘍が縮小してもほとんどの場合、治療抵抗性を獲得し、再び増大して再発に至る。
(注2)超並列シミュレーション
スーパーコンピュータを用いて数千以上のシミュレーションを同時に行うこと。本研究で用いたスーパーコンピュータSHIROKANEはパソコンの数千倍の計算能力を有する。

プレスリリース