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ユーザー参加型のゲノム研究により宿主遺伝要因が日本人腸内細菌叢に影響を与えることを確認
~"Community-derived science"実現による成果~

解説

東京大学医科学研究所 附属ヒトゲノム解析センター 健康医療インテリジェンス分野の井元 清哉教授、メタゲノム医学分野の植松 智 特任教授、株式会社DeNAライフサイエンス(以下、DeNAライフサイエンス)、森永乳業株式会社らの研究グループは、DeNAライフサイエンスが推進するユーザー参加型のゲノム研究プロジェクト「MYCODE Research」(マイコード・リサーチ)(注1)のもと、アジア人集団で初となる腸内細菌叢のゲノムワイド関連解析(GWAS、注2)を実施しました。

腸内細菌叢は食事などの生活習慣(外的要因)や宿主遺伝要因(内的要因)の影響を受けることが知られていましたが、これまでは外的要因に着目した研究が主であり、内的要因も含めた詳細な解析は多くは報告されていませんでした。本研究では、MYCODE Researchによる研究参加者リクルートを行い、より均質な遺伝的背景を有する日本人集団に対して、外的要因の影響を調整したうえでGWASを実施したところ、関連が示唆される5つのゲノム領域を新規に同定しました。更に遺伝率(注3)の解析から、日本人腸内細菌叢の遺伝要因が多遺伝子構造(polygenic architecture、注4)を取ることを見いだしました。
本研究成果は、2020年11月18日に英国科学誌「Communications Biology」オンライン版に掲載されました。

(注1)MYCODE Research(マイコード・リサーチ)
株式会社DeNA ライフサイエンスの遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」会員の中から研究に同意いただいた方の協力を得て行うユーザー参加型の研究プロジェクト

(注2)ゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome Wide Association Study)
ヒトゲノム配列上に存在する数十~数百万か所のSNP等の遺伝子多型と疾患や体質との関連を網羅的に検討する、遺伝統計解析手法。数千人~百万人を対象に大規模に実施されることで、これまでに様々な疾患や体質に関連するがゲノム領域が同定されている。

(注3)遺伝率
疾患や体質といった形質に対する遺伝要因の影響度を測る尺度。形質の分散に対して遺伝要因の分散が占める割合で定義される。

(注4)多遺伝子構造(polygenic architecture)
疾患や体質といった形質に対して、寄与度はそれほど高くないSNP等の遺伝子多型が多数集積して影響を与える遺伝要因の様式

プレスリリース

論文情報

"Genome-wide association studies and heritability analysis reveal the involvement of host genetics in the Japanese gut microbiota"

Communications Biology オンライン版 2020年11月18日 doi:10.1038/s42003-020-01416-z

Sachiko Ishida*, Kumiko Kato, Masami Tanaka, Toshitaka Odamaki, Ryuichi Kubo, Eri  Mitsuyama,  Jin-zhong  Xiao,  Rui  Yamaguchi, Satoshi  Uematsu, Seiya  Imoto, and Satoru Miyano
(*責任著者)

Communications Biology論文 別ウィンドウで開く