ヒトiPS細胞を使った小児脳腫瘍モデルの作製により、 小児脳腫瘍の病態を解明し、新しい治療標的を同定した
ヒトiPS細胞を使った小児脳腫瘍モデルの作製により、 小児脳腫瘍の病態を解明し、新しい治療標的を同定した
Cell Reports (米国東部時間3月5日午前11時オンライン掲載) DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2019.02.009
京都大学医学部附属病院脳神経外科の寺田行範大学院生、京都大学CiRA未来生命科学開拓部門の城憲秀大学院生、東京大学医科学研究所システム疾患モデル研究センター先進病態モデル研究分野の山田泰広教授らの研究グループは、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った新しい脳腫瘍のモデル作製に成功しました。このモデルを解析することで小児の悪性脳腫瘍の病態を明らかにし、さらにその原因を狙った新しい治療戦略を開発しました。
AT/RT(エーティー・アールティー:非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍)は、3歳未満の幼児、特に1歳以下の赤ちゃんにみられる最も予後が悪い脳腫瘍です。この腫瘍はなぜできるのかなどについてはよくわかっておらず、世界的にも定まった有効な治療法がありません。
本研究では、AT/RTにおける予後不良の原因を明らかにし、さらにその原因を狙った治療戦略の開発に成功しました。現在のところ効果的な治療法のないこの悪性の脳腫瘍に対する新しい治療標的を同定しました。
さらに、小児に発生する他の悪性腫瘍(神経芽腫、腎芽腫瘍、肝芽腫)にもAT/RTと同じ特徴があることを見出し、この治療戦略が他の小児がんの細胞にも効果があることを示しました。本研究成果は、小さな子ども達に起こるさまざまな腫瘍に対する治療法開発に応用できる可能性があります。