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医科研病院とTR

医科研病院とトランスレーショナルリサーチ


 東京大学医科学研究所および附属病院では、全国に先駆けて先端医療の開発体制を整備し、基礎研究を臨床応用へと橋渡しするトランスレーショナルリサーチ(Translational Research: TR)を実施してきました。

ウイルス療法・遺伝子治療

 医科学研究所附属病院では、1998年に日本で初めての癌の遺伝子治療として腎臓癌を対象とした臨床試験が実施されました。2001年には、ベクターや遺伝子組換えウイルスを製造することのできる治療ベクター開発センターが設置されました。ウイルスゲノムを遺伝子工学的に改変し、癌細胞でのみ増殖するウイルスを作成してがんの治療に応用するウイルス療法の日本で初めての臨床試験は、悪性脳腫瘍である進行性膠芽腫を対象に2009年に東京大学医学部附属病院で開始され、現在では医科学研究所附属病院も実施施設となっています。この遺伝子組み換え単純ヘルペスウイルスは、医科学研究所附属病院の治療ベクター開発センターで製造されました。医科学研究所附属病院では、この他に、遺伝子組み換え麻疹ウイルスを用いた乳癌治療開発等の研究も進行中です。

再生医療

 近年、幹細胞を特定の働きを持つ細胞に分化させ、その細胞を使って壊れたり失われたりした細胞や組織、臓器を修復する再生医療が脚光を浴びています。医科学研究所附属病院では、2005年から再生医療の臨床試験を行っています。現在は、自己骨髄由来間葉系幹細胞を用いた歯槽骨再生療法の臨床試験が実施されているほか、血友病性関節炎で破壊された関節軟骨の再生療法の試験も計画されています。こうした臨床試験に使用される細胞は、院内にある東大医科研細胞リソースセンターで、法令や指針に対応する形で調製されています。また、無菌試験、マイコプラズマ否定試験、エンドトキシン試験といった細胞製剤の安全性試験も、自施設で実施できる体制を整備しています。医科学研究所附属病院では、iPS細胞の実用化を目指したシーズ開発も支援しています。

ワクチン療法・抗体療法

 細胞療法を含むワクチン療法は、患者さん自身の免疫力(細胞性免疫)を高めて、病原性微生物の感染や増殖を抑えたり疾患細胞を破壊したりする免疫療法です。医科学研究所附属病院では、HIVやインフルエンザウイルス、コレラ菌などの感染症の予防や治療に役立つワクチンの開発に携わってきました。また、悪性黒色腫や消化器癌といった種々の悪性腫瘍に対するワクチン療法を開発し、臨床試験を実施してきました。
 抗体療法は、疾患細胞表面の特定分子に結合する抗体が、疾患細胞を攻撃したり、炎症や疾患細胞の増殖を引き起こす因子を阻害したりして、効果を発揮します。医科学研究所附属病院では、これまでに悪性中皮腫に対する抗体療法の開発を支援してきました。
 こうした経験を踏まえて、医科学研究所附属病院では新たなワクチンや抗体医薬の開発に取り組み、難治癌や免疫性疾患、炎症性疾患などの治療に結び付けたいと考えています。

開発中のシーズ

 医科学研究所で開発が進んでいるシーズをご紹介いたします。

文部科学省
橋渡し研究加速ネットワークプログラム

 平成19年に、医科学研究所附属病院は東京大学医学部附属病院と共に文部科学省「橋渡し研究支援推進プログラム」の拠点のひとつに選ばれ、TRの円滑な推進を目的に体制強化、機能拡充、人材育成を進めてきました。「橋渡し研究支援推進プログラム」は、平成24年度から「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」へと発展しました。これまでに整備してきたシーズ育成能力を向上し、他の研究機関や医療機関とのネットワークを構築することによって、より多くの基礎研究成果を臨床応用へとつなげられるように努めています。