文責:TR・治験センター
あ行
- アゴニスト(agonist)
- 受容体を介し、生体(細胞)内活性を刺激する物質。
- アンタゴニスト(antagonist)
- 受容体に作用するが、それ自体は受容体を活性化する作用を持たず、アゴニストが受容体に作用することを妨げる物質。
- 医師主導治験
- 平成15年より製薬企業だけではなく医師が主体となって治験を行うことができるようになった。患者数が少ないため製薬企業等が治験を行わない疾患での承認獲得、あるいは既に承認されている医薬品の適応拡大を目的とする場合と、治療方法の概念が新しい等の理由により製薬企業が開発を躊躇するため開発者が自ら行う場合に大別される。
- 逸脱
- 実施計画書(治験実施計画書)に違反した事象、または違反すること。
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- 医療品・医療機器の治験審査業務、承認審査業務、及び医薬品の安全対策と健康被害救済業務を行う。治験審査、承認審査を厚生労働大臣に代わって行うことから、独立行政法人であるが、厚労省の一部のような立場。治験届けは、厚生労働大臣宛で、ここに提出する。
- インヒビター(inhibitor)
- 「阻害剤」、「阻害因子」。生体活性あるいは細胞の伝達系に抑制的に働く因子(薬剤)。
- インフォームド コンセント(informed consent)
- 「説明同意文書」。「IC」参照。
- ウォッシュアウト(washout)
- 薬物が時間経過と共に体内から無くなること。臨床試験では、過去に投与された薬物の影響を排除するために、被験薬投与前にウォッシュアウト期間を設定することがある。
- 後ろ向き研究
- 「レトロスペクティブ スタディ(retrospective study)」参照。
- エンドポイント(endpoint)
- 臨床試験において、有効性・安全性を評価するために用いられる指標、評価項目。エンドポイントは実施計画書に記載され、その試験の目的に応じて、「プライマリー エンドポイント」、「セカンダリー エンドポイント」が設定され、客観性と普遍性が望まれる。また、「真のエンドポイント」と「代替エンドポイント(サロゲート エンドポイント)」に分ける場合がある。
- オーファン ドラッグ(orphan drug)
- 「希少疾病用医薬品」。対象患者が少ないが、有効な治療法が無く、治療上の必要性が高い場合に使用(開発)される医薬品。対象患者が少ないと、開発費用に見合う利益を見込めず採算が合わないため、製薬企業が開発しない。そこで希少疾病用医薬品の開発促進を目的として、優先的審査、再審査期間の延長、及び金銭面での優遇措置がとられている。我が国における対象患者が5万人以下の重篤な疾病で、医療上の必要性が高く、他に有効な治療法が無い場合に厚生労働省の指定を受けることができる。
か行
- 介入試験
- 医薬品の投与、手術、医療機器の使用、あるいは看護ケア等、何らかの処置を被験者に行う試験。
- 監査
- 治験の品質を保証する活動の一環として、治験に関わる業務および文書が、GCP (Good Clinical Practice)、治験実施計画書、標準業務手順書を遵守 しているか評価・確認する作業。治験依頼者によって指名された監査担当者が、治験依頼者やモニターとは独立して行う。モニタリングは医療機関が調査の対象であるが、監査は治験依頼者も含めて実施する。
- 完全寛解
- 「CR (complete remission)」参照。
- 希少疾病用医薬品
- 「オーファン ドラッグ(orphan drug)」参照。
- 規制当局
- 薬事規制を行う監督省庁を指し、治験の場合は厚生労働省。ほとんどの場合、審査業務を行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)も含む。
- クリアランス(clearance)
- ある物質が排泄、代謝により生体から除去される速さを表す値。腎機能・肝機能等と関連して評価されることが多い。
- クロスオーバー(crossover)試験(クロスオーバー比較試験)
- 「交差試験」とも呼ばれる。A群とB群を設定し、第1クールではA群に試験薬、B群に対照薬を投与する。次の第二クールではA群に対照薬、B群に試験薬を投与する。このように順次入れ替えていく試験デザイン。比較的症状の安定している慢性の疾患で、傾向変動が見られず、薬剤の効果が速やかに現れ、かつ治療中止後に患者が基準の状態にすぐに戻り、薬剤の治療効果が可逆的な場合に適する。必要な症例数が少なくなる利点がある。
- グローバル スタディ(global study)
- 「国際共同治験」。一つの治験を世界規模(多数の国)で同時に行う枠組み。一つの試験の結果を各国の承認申請に使えることがメリット。ただし、用量・用法設定などを共通化し、承認条件を合わせる必要がある。現在は、大手製薬企業を中心にグローバル スタディが積極的に進められているが、日本が大きく取り残されている問題が指摘されている。
- ケース レポート フォーム(case report form)
- 「CRF (case report form)」参照。
- 血液学的毒性
- 有害事象判定における、末梢血の「白血球数、白血球分画、赤血球数、ヘモグロビン値、血小板数等」のいわゆる「血算」の検査で評価される毒性。生化学等の採血検査は含まれない。
- 原資料
- CRF(症例報告書、ケース レポート フォーム)作成の元となる資料。診療録(カルテ)、検査結果報告書、メモ、被験者の治験日誌、画像(CTやレントゲン写真など)等が該当する。
- 効果安全性評価委員会
- 「独立モニタリング委員会」とも呼ばれる。治験依頼者により設置され、予め定められたポイントで(中間解析等)、あるいは随時開催されて、治験の継続の適否や実施計画書の変更について審議する。
- 交差試験
- 「クロスオーバー試験(クロスオーバー比較試験)」参照。
- 高度医療
- 平成20年の高度医療評価制度の制定において定められた。目的は「医療の高度化とこれらの医療技術に対する患者のニーズ等に対応するため、薬事法上の承認を得ていない医薬品・医療機器を用いた医療技術を、一定の要件の下に「高度医療」として認め、保険医療と併用できることとし、薬事法上の承認申請等に繋がる科学的評価可能なデータ収集の迅速化を図ること」。
もともと「先進医療」としてスタートしていたが、この制定により、薬事法の承認・認証・適応のあるものは「第2項先進医療」(=従来の先進医療)に、薬事法の承認・認証・適応のないもの(既承認医薬品・医療機器の適応外を含む)は「第3項先進医療」(=高度医療)に分類され、ともに保険診療との併用が認められることになった。「広義の」先進医療は第2項先進医療と第3項先進医療を合わせたものを指す一方、「狭義の」先進医療は第2項先進医療を指すので、注意が必要。
高度医療として認定されるためには、先行する臨床試験において有効性・安全性のデータが得られていること、施設要件を満たすこと、科学的な臨床試験計画を立案すること等が課せられる。 - 国際共同治験
- 「グローバル スタディ(global study)」参照。
- 固形腫瘍
- 白血病や多発性骨髄腫などの血液腫瘍を除いた、肝癌、大腸癌、胃癌などの塊を形成する腫瘍。悪性リンパ腫は多くの場合、固形腫瘍には含まれない。
- 個人輸入
- 国内で未承認の医薬品を使用するために海外から輸入すること。患者が個人的に輸入する場合と、医師が個人的に輸入する場合がある。現行法を厳密に解釈すると保険診療と併用できない。
- 混合診療
- 保険診療と自由診療を併用する診療を指す。治験では、保険外併用療養費制度(旧:特定療養費制度)により、治験に直接関わる部分を除き、診療費等の基礎的部分の保険給付が認められている。
- コントロール(control)
- 「対照」。比較試験で「試験される治療法」と比べる標準療法、またはそれを受ける被験者を指す。
- コンプライアンス(compliance)
- 「遵守 」の意であるが、治験の場合は、①「服薬のコンプライアンス」:被験者が用法・用量を遵守 し服用すること、②GCP (Good Clinical Practice)等の規制を遵守 すること、の意で使用される。
さ行
- 最高血中濃度(Cmax)
- 薬物投与後の血中濃度の最高値。薬剤の有効性・安全性と関連する。
- 再審査
- 新薬の承認を受けた者は、承認のあった日から定められた期間後に当該医薬品の有効性・安全性について主として市販状況でのデータをまとめ厚生労働大臣の再審査を受けなければならない。
- 最大耐用量
- 「MTD (maximum tolerated dose)」参照。
- サイトカイン(cytokine)
- 細胞が分泌するタンパク質で、受容体を介して細胞の増殖・分化・機能発現などを調整するものの総称。G-CSF、インターロイキン-2、インターフェロン、エリスロポイエチン等が該当する。
- サロゲート エンドポイント(surrogate endpoint)
- 「代替エンドポイント」とも呼ばれる。真のエンドポイントの検証には一般に長期にわたって多数の被験者が必要となるため、その代替として設定されるエンドポイント。真のエンドポイントと密接に関連するものを選択する。例えば抗がん剤では奏功率(がんの縮小)、降圧剤では血圧低下度、糖尿病薬では血糖やヘモグロビンA1c等が該当する。
- 自主臨床試験
- 治験以外の臨床試験。患者自身の細胞を調製して投与する場合などは、現行の治験制度に馴染まないため、自主臨床試験として行われることが多い。
- 実施計画書(治験実施計画書)
- 「プロトコル(protocol)」とも呼ばれる。治験実施医療機関(及び治験責任医師、治験分担医師、時に治験依頼者)が実施、遵守 する事項を記載した計画書。治験審査委員会において、説明同意文書(IC)とならぶ重要審議資料。治験を実施する側は実施計画書違反(逸脱)を起こさないようにしなければならない。
- 市販後調査
- 医薬品の承認・販売後に製造販売業者が実施する調査。「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準」(GPSP:Good Post-marketing Study Practice)に基づく製造販売後調査・試験と「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準」(GVP:Good Vigilance Practice)に基づく安全性確保業務をいう。
- 重篤な有害事象
- ICHガイドラインでは、有害事象のうち、死亡に至るもの、生命を脅かすもの、治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの、永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの、先天異常を来すもの、またはその他の重大な医学的事象を指す。個々の臨床試験において実施計画書あるいはSOP (Standard Operating Procedures)で規定することもできる。
- 受容体
- 「レセプター(receptor)」参照。
- 主要評価項目
- 「プライマリー エンドポイント(primary endpoint)」参照。
- 症例報告書
- 「CRF (case report form)」参照。
- 白ラベル、白箱
- 市販後臨床試験で、二重盲検試験等を行う際に、薬剤を同定できないようにするため、市販用のラベルを貼らず、治験薬のようにコード等のみ印刷された白っぽい地味なラベルを用いる。このようなラベルを「白ラベル」という。この「白ラベル品」の入った箱も同様に市販薬の箱が使用されないので「白箱」と呼ばれる。
- 真のエンドポイント
- エンドポイントのうち、治験薬の直接の臨床効果よりも、むしろ生命・健康全体としての利益を評価する項目。抗がん剤であれば、がんの縮小ではなく、生存期間の延長やQOLの向上が真の利益である。降圧剤では血圧の低下よりも心・脳血管障害の防止、糖尿病薬では血糖低下よりも血管障害関連事象の防止が真のエンドポイントに相当する。
- スニップ
- 「SNP」参照。
- ステイクホルダー(stakeholder)
- 「利害関係者」。治験の開発、進行、承認により様々な利害関係者が発生する。
- スティミュレーター(stimulator)
- 「刺激因子」、「刺激薬剤」。生体活性或いは細胞内の伝達を刺激する因子、薬剤のこと。
- 製造販売後臨床試験
- 治験もしくは使用成績調査から得られた推定等を検証するため、又は診療においては得られない品質、有効性及び安全性に関する情報を収集するために製造販売業者が行う臨床試験。用法、用量、効能及び効果は医薬品として承認された範囲に従って実施され、GCPおよびGPSPを遵守しなければならない。
- 製造物責任法
- 「PL (Product Liability)法」参照。
- 生物由来製品
- 植物を除く、人間あるいは動物等の生物に由来するものを原材料として製造される医薬品。既知・未知の感染症をもたらす危険性があるので注意が必要。
- セカンダリー エンドポイント(secondary endpoint)
- 「副次的評価項目」とも呼ばれる。エンドポイントのうち、試験の目的から、重要度においてプライマリー エンドポイントの次に位置するもの。
- 説明同意文書
- 「IC」参照。
- 先進医療
- 「高度医療」参照。
- 漸増試験
- 被験薬の最適な投与量を決定するために、投与量を徐々に増やしていきながら結果を評価する試験デザイン。抗がん剤の第I相試験において行われることが多い。
- 前臨床試験
- 「非臨床試験」参照。ほぼ同義であるが、最近は「非臨床試験」が好まれる。英語では"preclinical study"。
- 総括報告書
- 治験が終了した際に、その結果や考察を報告書としてまとめたもの。
- 奏功率
- 「RR (response rate)」参照。
- 層別化
- ランダム化比較試験において、いずれかの群に特定の因子保有者が偏らないように、ランダム化前に、あらかじめ両群にこれらが均等に分かれるように操作すること。
た行
- 第I相試験(phase I trial)
- 最初の段階の臨床試験。 抗がん剤では標準療法(生存期間の延長もしくはQOLを向上する治療法)が適応とならない患者を対象として、MTD (maximum tolerated dose)を決めるために漸増試験として行われることが多い。 一方、抗がん剤以外では健常成人または軽症患者を対象として、PK/PD (pharmacokinetics/pharmacodynamics)の検討を主目的として行われる事が多い。
- 第II相試験(phase II trial)
- 2番目の段階の臨床試験。 比較的少数の患者に対して第I相試験で安全性が確認された用量の範囲内で試験薬を投与し、その(1) 安全性と有効性、(2) 薬物動態、(3) 最適な用法(投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)など、第III相試験に進むための情報を収集することを目的とする。試験薬だけの単一群(single arm)で行われることが多いが、標準療法との比較試験として行われることもある。また、早期第II相試験(phase IIa)と後期第II相試験(phase IIb)とに分けてそれぞれを探索的臨床試験、実証臨床試験とすることもある。
- 第III相試験(phase III trial)
- 3番目の段階の臨床試験。 多数の患者に対して、第II相試験で得られた結果に基づく用法・用量に従い薬物を投与し、実際の治療に近い形で、その(1) 有効性と安全性、(2) 適応疾患における用法・用量、(3) 副作用、他剤との相互作用などを、標準療法との比較試験により評価・検証する。
- 第IV相試験(phase IV trial)
- 承認・市販後に行われる臨床試験で、「製造販売後臨床試験」とも呼ばれる。他の承認薬あるいは標準療法との比較試験として行われることが多い。
- 対照
- 「コントロール(control)」参照。
- 代替エンドポイント
- 「サロゲート エンドポイント(surrogate endpoint)」参照。
- 多施設共同試験(治験)
- 共通の実施計画書に従い、複数の医療施設で行われる臨床試験(治験)。各施設において治験責任医師が任命される。多数の被験者を要する場合に行われることが多いが、施設間で結果にバラツキが生じる可能性がある。
- 単回投与試験
- 連続投与を行わず、一回(単回)投与を行う試験。薬物動態の検討に適する。
- 探索的臨床試験
- 「トランスレーショナル リサーチ(translational research)」参照。
- 単盲検試験
- 被験者のみ盲検化されている試験。治験実施医師は割りつけられた治療内容を知っているが、被験者が知らない形で進められる。
- 治験
- 製造・輸入・販売の承認を申請するために必要なデータを得るために行われる臨床試験。治験届けを医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出後、GCP (Good Clinical Practice)に基づき施行される。 製薬企業等による治験と医師主導治験とに分けられる。
- 治験依頼者
- 治験の遂行及び資金の責任者。通常は製薬企業。
- 治験協力費
- 今日では、「負担軽減費」と呼ばれることが多くなった。「負担軽減費」参照。
- 治験コーディネーター
- 「CRC (clinical research coordinator)」参照。
- 治験施設支援機関
- 「SMO (Site Management Organization)」参照。
- 治験事務局
- 医療機関において、治験審査委員会の運営業務、製薬企業等との契約や連絡、被験者への支払いに関わる業務等を行う事務部門。
- 治験審査委員会
- 治験実施施設において、施設の長によって設置され、治験の実施の適否や実施中の出来事への対応等について施設の長から意見を求められ、答申する機関。医学・自然科学の専門家及び非専門家から構成される独立の組織。
- 治験責任医師
- 治験実施医療機関で、当該の治験の実施に関して責任を有し、治験分担医師、治験協力者を取り纏め業務を遂行する医師または歯科医師。
- 治験分担医師
- 治験実施医療機関で、治験責任医師から指名され、治験業務を分担する医師又は歯科医師。治験分担医師(+治験責任医師)に任命されていないと、治験に関わる業務はできない。特に入院での治験において、治験分担医師以外の医師が治験業務に関わることがないよう注意が必要。
- 治験薬概要書
- 治験薬についての臨床及び非臨床データを編集した資料。治験では治験依頼者が必ず作成し、治験実施医療機関に提出しなければならない。治験責任医師、治験分担医師は治験薬概要書の内容を完全に理解し、熟知している必要がある。 治験薬概要書に記載されていない副作用が出現した場合には予期せぬ副作用となる。
- 治験薬管理者
- 治験実施医療機関で治験薬を管理する責任者。治験依頼者との治験薬の受け渡し、被験者への引き渡しと残薬の受領、保管、服薬指導等の業務の責任者。
- 中間解析
- 臨床試験の終了以前に行われるデータ解析。比較試験では、どちらかの群の被験者が有効性あるいは安全性の面で不利とならないか確認するため、その施行が予め規定されていることがある。
- 直接閲覧
- 治験依頼者のモニター、監査担当者、あるいは規制当局の担当官が、治験実施施設で治験に関する記録を閲覧すること。モニターが実施する場合にはSDV (Source Data Verification, Source Document Verification)と呼ばれる。
- 適応拡大(適応追加、効能追加)
- 医薬品では、承認時に治験の対象疾患をもとに、当該の医薬品の適応疾患が決められる。承認後に治験を実施し、適応となる疾患を増やすことを指す。
- データ マネージメント(data management)
- 治験症例のデータ管理業務。症例報告書のデータの入力、チェック、疑義の照会が含まれる。
- 添付文書
- 市販医薬品に添付されている文書。用法、用量、効能、使用上の注意、組成、薬物動態、臨床成績、薬効薬理、包装等が記載されている。
- 同等性試験
- 被験薬が、対照薬(通常、標準療法)と同等の臨床的有用性を示すことを検証する試験。ある程度の許容量(上限と下限)を設定して、臨床的有用性がその範囲内に収まることを証明する。事実上、非劣性試験と同じ内容になることが多い。
- トゥルー エンドポイント(true endpoint)
- 「真のエンドポイント」参照。
- 独立モニタリング委員会
- 「効果安全性評価委員会」参照。
- トラフ(trough)
- もともとは、船底や海底盆地を意味する言葉。投薬直前の血中濃度が最低となることから、転じてこの最低血中濃度を指す。シクロスポリン、タクロリムスなどの血中濃度モニタリングで測定される。
- トランスレーショナル リサーチ(translational research)
- 「橋渡し研究」、「探索的臨床試験」、「TR」とも呼ばれる。病気のメカニズム等の基礎研究を基に開発した医療手段を臨床応用する初期の臨床試験を主に指す。研究者により定義はまちまちであるが生物学的基礎研究を核としている。医薬品のみならず、細胞療法、遺伝子治療、核酸医療、再生療法等治療手段が多岐に渡る特徴もある。
は行
- バイアス(bias)
- 「偏り」。ある治療の効果についての推定値と真の値の間に差を生じさせる、臨床試験のデザイン、実施、解析、結果の解釈におけるあらゆる観点からの系統的な傾向。例えば、良い結果を出しそうな患者を選択する、良い結果ばかり収集する、投薬のミス、測定方法の不正確さ等。
- バイオアベイラビリティ(bioavailability)
- 投与された薬剤が、どの程度生体で利用されるのかを指す。吸収がよく、血中濃度が高くなれば、バイオアベイラビリティは良い(高い)。
- バイオマーカー (biomarker)
- 身体の状態やその変化の測定・評価、疾患の診断・検査等に役立つ、数値化できる指標のこと。
- パイロット(pilot)試験
- 本格的に検証する大規模試験の前に、大規模試験の実現可能性を検討するために行う小規模試験を指す。あまりデータが多くない場合や試験の相の分類を当てはめることが難しい手術などで、試験を表す用語として用いられることがある。最近では試験の相を記載するようになってきているので以前より使用される頻度が減少している。
- 橋渡し研究
- 「トランスレーショナル リサーチ(translational research)」参照。
- バリデーション(validation)
- 電子データ処理システム、あるいは製造・調製に関わる機器や施設が、定められている機能と品質を維持していることを保証するための検証作業。
- 反復投与試験
- 被験薬を反復して(通常は連日)投与し、PK/PD (pharmacokinetics/pharmacodynamics)あるいは毒性を検証する試験。第I相試験で行われる事が多い。
- 比較試験
- 試験群とその他の対照群を設定し、複数の群間を比較するデザインの試験。
- 非血液学的毒性
- 有害事象判定における、血液学的毒性以外の毒性。
- 必須文書
- GCP (Good Clinical Practice)において、記録・保管が求められる文書・資料のこと。
- 非盲検試験
- 盲検化せずに行う試験。被験者、治験実施医師いずれもが割りつけられた治療内容を知っている形で進められる。英語では"open study"。
- 標準業務手順書
- 「SOP (Standard Operating Procedures)」参照。
- 非臨床試験
- 医薬品の有効性・安全性を調べるために、動物・細胞等を用いて実施される試験。人以外を対象とするので「非」臨床試験という。多くは臨床試験前に実施されるため前臨床試験と言われることが多かったが、臨床試験と並行して行われる場合もあることから、最近は「非臨床試験」が使用されることが多い。
- 非劣性試験
- 試験群(study arm)が対照群(control arm)に臨床的に劣らないことの検証を目的とする比較試験。臨床的に許容できる下限を下回らないことを確認する。
- 品質管理
- 「QC (quality control)」参照。
- 品質保証
- 「QA (quality assurance)」参照。
- ファーストライン(first-line)
- 標準治療における第一選択療法のこと。これに不応・不耐の場合には第二選択療法(セカンドライン)が試みられ、以後続く場合がある。
- 副作用
- 有害事象のうち、医薬品の投与との因果関係を否定できない事象を言う。一般的には、医薬品による悪い作用。
- 副次的評価項目
- 「セカンダリー エンドポイント(secondary endpoint)」参照。
- 負担軽減費
- 治験に参加すると交通費が必要であったり、時間的拘束を伴ったりする。このような被験者の負担を軽減するために支払われる費用のこと。謝礼や被験者を集める手段ではない。以前は「治験協力費」と言われる事が多かった。
- 部分寛解
- 「PR (partial response)」参照。
- プライマリー エンドポイント(primary endpoint)
- 「主要評価項目」とも呼ばれる。主たるエンドポイント。臨床的及び生物学的に意味のある効果を反映し客観的評価が可能な項目で、通常、試験の主要な目的に基づいて選択される。
- プラセボ/プラシーボ(placebo)
- 「偽薬」。薬理作用のない物質からなりたち、思いこみによる生体反応等の偏りを避けるために使用される。
- プラセボ効果(プラシーボ効果)
- 薬理作用を有しない物質(プラセボ)を投与しても、生体反応がみられること。鎮痛薬と称して生理食塩水を投与しても鎮痛効果が認められることは多い。このような効果を回避するために盲検化が行われたり、プラセボが対照群に設定されたりする。
- ブリッジング スタディ(bridging study)
- 海外でのデータを、日本のデータとして活用するために行われる試験。
- プロスペクティブ スタディ(prospective study)
- 「前向き研究」とも呼ばれる。研究計画を立案し、ある時点から観察、あるいは介入行為を行い、データを収集する試験。臨床試験はプロスペクティブ スタディ。「前向き」とはある時点から将来に向かって行うという意味であり、積極性とは無関係。
- プロトコル(protocol)
- 「実施計画書(治験実施計画書)」参照。
- ベイズ流解析手法
- 臨床試験でよく用いられる統計の手法。幾つかのデータを基に将来の変動を予測するのが主な手法。
- 保険外併用療養費制度
- 健康保険では、保険が適用されない保険外診療があると保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となる(混合診療の禁止)。ただし、保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」(高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきか否かの評価が必要な療養)と「選定療養」(被保険者の選定に係る特別室その他の療養)については、保険診療との併用が認められており、診療費等の基礎的部分に対して保険給付が行われる。これを「保険外併用療養費制度」という。医薬品や医療機器の治験に係る診療、先進医療等は「評価療養」に分類され、通常の保険適用の治療と共通する基礎部分については保険診療と同様に一部負担金を支払い、残りの額が「保険外併用療養費」として健康保険から給付されることになる。
ま行
- マイルストーン(milestone)
- もともとの意味は「一里塚」。転じて、プロジェクトの節目を指す。新規医薬品開発においては、開発企業と結ぶ契約のうち、開発進捗に伴って発生する支払金(milestone payment)。例えば「第I相試験終了時にいくら」、「承認申請時にいくら」等。医薬品開発企業にとっては、マイルストーンを開発段階毎に設定することで、予期せぬ副作用の発生などの事態に対してリスク分散を図れるというメリットがある。
- 前向き研究
- 「プロスペクティブ スタディ(prospective study)」参照
- マルク
- 「骨髄穿刺」のこと。皮膚に麻酔をしてから胸骨あるいは腸骨に細い針を刺し、骨の中心部にある骨髄から骨髄液を注射筒にて吸引する。ドイツ語に由来する。
- 無作為化
- 「ランダム化」参照。
- 盲検化
- 「blind, blinding」参照。
- モニター(monitor)
- モニタリングを担当する者。
- モニタリング(monitoring)
- 治験依頼者の依頼により、治験が治験実施機関において、実施計画書、SOP (Standard Operating Procedures)、GCP (Good Clinical Practice)及び関連規制に従って実施、記録、報告され、記録が適切に保存されていることを保証するための活動。一部SDV (Source Data Verification, Source Document Verification)が含まれる。
や行
- 薬物動態学
- 「PK (pharmacokinetics)」参照。
- 薬力学
- 「PD (pharmacodynamics)」参照。
- 優越性試験
- 試験群(study arm)が対照群(control arm)より臨床的に優れていることの証明を目的とする比較試験。
- 有害事象
- 被験物を投与された被験者に発生した(検査値の変動を含む)あらゆる好ましくない医療上のできごと。被験物との因果関係は問わない。被験物の投与を以て判断する場合と、試験への参加を以て判断する場合がある。
- 用法
- 医薬品の投与経路(経口、静注等)、頻度(1日×回等)、期間の総称。
- 用量
- 一投与当り又は一日当りに与えられる医薬品の量。
- 用量規定毒性
- 「DLT (dose limiting toxicity)」参照。
- 予期せぬ副作用
- 「予期せぬ」とは、治験薬概要書あるいは実施計画書に記載されていないこと。予期せぬ副作用は、治験薬概要書あるいは実施計画書に記載されていない副作用、もしくは記載事項と重篤度・特異度において異なる副作用が該当する。
ら行
- ランダム化
- 「無作為化」とも言う。複数の治療群のいずれかに無作為(ランダム)に被験者を割り付けること。治験責任医師等の判断ではなく、予め決められた方法で機械的に決まる。これによって、被験者割り付けのバイアス(治療効果が高いと期待される患者を目的治療群(治験薬と投与して効果を調べる群)に割りつけたり、治療効果が低いと想定される患者を対照群に割りつけるなど)が軽減される。
- ランダム化比較試験
- 複数の治療群(プラセボが含まれる場合もある)を比較する試験において、被験者の偏りを防ぐために、被験者をランダム(無作為)に割り付けて行われるもので、薬物または治療法を最も適正に評価する方法として広く採用されている。ただ、全くのランダムではなく、ある条件が群間で等しくなるように予め方法を決めておくことが多い。
- 利益相反
- 教職員又は大学が産学連携活動に伴って得る利益と、教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状況。臨床試験では、例えば治験責任医師が当該製薬企業の株式を保有していたり役員を兼業している場合には、試験の成功が治験責任医師の利益につながる可能性がある。この可能性が公正な業務の実施に影響を及ぼした場合には利益相反行為となる。寄付金や研究生の受け入れ、講演の謝礼等も利益とみなされることがあるが、ケース バイ ケースで判断せざるをえないのが実情。
- 利害関係者
- 「ステイクホルダー(stakeholder)」参照。
- 臨床研究
- 人間(血液等の検体や検査データを含む)を対象とした医学研究で、疾患の基礎病態の解明、診断・治療・予防方法の開発、あるいは健康増進方法の開発等を目的とする。
- 臨床試験
- 臨床研究のうち、人間に対して医薬品の投与あるいは医療機器の使用などの介入行為を行い、ある決められた時点から情報を収集するもの(過去に遡らないのでプロスペクティブ スタディ(前向き研究)という)。 臨床試験は、安全性と有効性を確かめながら段階的に進められ、4つの相(第I相試験、第II相試験、第III相試験、第IV相試験)に分類される。
- 臨床試験コーディネーター
- 「CRC (clinical research coordinator)」参照。
- 臨床薬理試験
- 薬物動態試験と薬力学試験の総称で「PK/PD試験」と略される。第I相試験で行われることが多いが、肝障害、腎障害などの臓器障害や、病気の重症度に応じて追加として行われることもある。
- レセプター(receptor)
- 「受容体」。細胞表面(細胞膜)に存在し(核内等の場合もある)、外からの物質に特異的に結合する構造。外からの情報を受け取り、細胞内の反応の引き金となる。
- レトロスペクティブ スタディ(retrospective study)
- 「後ろ向き研究」とも呼ばれる。研究を開始する時点から、過去の情報を遡って調査する研究。観察研究も概念として類似している。「後ろ向き」とは決して消極的という意味ではない。対義語は「プロスペクティブ スタディ(prospective study)」。
- ロイヤルティ(loyalty)
- 通常は、特許等の知的財産権に対する使用料、対価。製薬業界では市販後に支払われる使用料、対価を指す。
A-C
- ADL (activities of daily living)
- 身のまわりの生活動作(食事、更衣、整容、排泄、入浴)と起居移動動作から成る。日常生活をどの程度自立して送ることができるかを推定する。
- ADME
- 薬物が生体内においてどのように移行し変化するかの流れ。absorption(吸収)、distribution(分布)、metabolism(代謝)、excretion(排泄)から成り立ち、その頭文字を表す。
- AE (adverse event)
- 「有害事象」参照。
- arm
- 臨床試験における「群」。試験群(study arm)、対照群(control arm)のように使用する。
- AUC (area under the blood concentration time curve)
- 縦軸を血中濃度、横軸を時間として、投与後の薬物血中濃度の推移をグラフとして描く。この際、この曲線と横軸(時間軸)によって囲まれる部分の面積を指す。AUCは、体循環する薬物量に比例するので、体内に取り込まれた薬物の量を示す指標として用いられる。
- blind, blinding
- 「盲検化」。バイアスを防ぐために、割り付けられた治療が被験者あるいは医師等、臨床試験に携わる者に判らないように工夫すること。誰が判らないか、によって以下のように3つのレベルがある。 二重盲検試験が最もバイアスの影響を受けにくく、その次が単盲検試験で、非盲検試験では盲検化されない。ただし、非盲検試験のみが実際的または倫理的に可能な場合がある。 "blind"は差別語であり、"mask"が好ましいという声もあるが、米国ではほとんどの場合"blind"が使用される。
- central IRB (institutional review board)
- 複数施設の治験審査を単一の治験審査委員会(IRB)で行う方法、およびそのIRB。「中央IRB」とも呼ばれる。多施設共同試験の際に治験ネットワークにより設置されたIRBが一括して審査を行うケース、複数の医療機関が共同でIRBを設置して審査を行うケース、SMO (Site Management Organization)のIRBが小規模医療機関の治験審査を代行するケースなどがある。医師会や学術機関が設置した外部のIRBに審査を依頼するケースも含む場合がある。
- Cmax
- 「最高血中濃度」参照。
- CR (complete remission)
- 「完全寛解」。固形腫瘍では画像診断を含め、腫瘍が消失した状態が4週間以上続いた場合にCRと診断する。白血病では、化学療法後、造血能が回復した状態で、幼弱細胞(ブラスト: blast)が末梢血中で認められず、骨髄で5%未満の場合にCRと診断する。
- CRC (clinical research coordinator)
- 「治験コーディネーター」、もしくは「臨床試験コーディネーター」。治験を含む臨床試験において治験責任医師の業務を補助する他、円滑な試験遂行のために多くの業務を担当する。
- CRF (case report form)
- 「症例報告書」。各被験者に関して、治験実施計画書により規定されるデータを記録・報告するための、印刷又は光学的若しくは電子的な記録様式。報告の内容、形式、記載あるいは訂正方法に注意を要する。
- CRO (Contract Research Organization)
- 「医薬品開発業務受託機関」。治験において治験依頼者(製薬企業)の治験に関わる業務の一部を代行・支援する企業。つまり、製薬企業の治験業務の下請け、アウトソーシング企業。
- CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events)
- 米国NCI (National Cancer Institute)が定めた有害事象の評価方法。「グレード1」:mild、「グレード2」:moderate、「グレード3」:severe、「グレード4」:life-threatening、「グレード5」:deathと分類される。臓器等が異なっても同じような重症度として評価できるように考慮されている。 以前はCTC (Common Toxicity Criteria)、ver.3よりCTCAEとなっている。ver. 2(CTC)までは抗がん剤用であったが、ver.3(CTCAE)以降は全ての薬剤で使用される。
D-G
- DDS (drug delivery system)
- 目標とする部位に選択的に十分な薬物が到達するように工夫したシステム。他の物質と結合させたり、他の物質に封入したりする。
- DLT (dose limiting toxicity)
- 「用量規定毒性」。抗がん剤第I相試験において、グレード3以上の非血液学的毒性あるいはグレード4以上の血液学的毒性が出現した場合と規定され、出現頻度及びその程度により、当該投与量に伴う毒性が許容範囲内かどうかを判断するために用いられる。
- DM (data management)
- 「データ マネージメント(data management)」参照。
- EBM (evidence based medicine)
- 十分な科学的根拠に基づく治療。従来の医師の個人的経験と勘に基づく医療の対極に位置する。
- EDC (electric data capturing)
- 「電子的データ収集」。治験実施施設にあるパソコン、あるいは当該治験専用のパソコンに入力された治験データを、インターネットあるいは専用回線経由で取得し、データ管理を行うこと。
- FDA (Food and Drug Administration)
- 「(米国)食品医薬品局」。米国における医薬品、医療機器、化粧品、食品の許認可及び監督を行う行政機関。
- feasibility
- 実現可能性。
- FIM (first-in-man)
- 新たな医療行為が最初に人間に用いられる段階。動物実験等のデータはあるものの人に用いられたことがないので十分な根拠と注意が必要という意味をこめて使用されることが多い。第I相試験を指すことがある。
- GCP (Good Clinical Practice)
- 「医薬品の臨床試験の実施の基準」。ICHで合意された臨床試験の実施に関するガイドラインを指す場合と、1997年に省令として日本で定められたものを指す場合がある。被験者の人権と安全性、及び、臨床試験データの信頼性を確保し、臨床試験が倫理的な配慮のもとで科学的に実施されることを目的とする。治験審査委員会の審議では、治験がGCPに準拠しているかどうかが最も大きなポイントとなる。
- GLP (Good Laboratory Practice)
- 「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準」。非臨床試験(前臨床試験)の安全性試験データの質を保証するために定められた省令。動物実験のための設備、施設、作業手順、体制等も規定されている。
- GMP (Good Manufacturing Practice)
- 「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」。医薬品製造過程の品質管理を行い、人に投与するに足る品質を保証するために定められた省令。被験物を製薬企業が用意する場合、治験責任医師はあまり考慮しなくてもよいが、自前で細胞等を調製し投与する場合にはこれに準拠して行わなくてはならない。施設、設備、構造の他、作業手順や体制も規定されている。
- GPSP (Good Post-marketing Study Practice )
- 「使用成績調査」日常の診療において、医薬品を使用する患者の条件を定めることなく、副作用の発現状況並びに品質、有効性及び安全性に関する情報の検出又は確認を行う調査。
- 「特定使用成績調査」使用成績調査のうち、特別な背景を持った患者(小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者、医薬品を長期に使用する患者など)を対象として行うもの。
- 「製造販売後臨床試験」治験もしくは使用成績調査から得られた推定等を検証するため、又は診療においては得られない品質、有効性及び安全性に関する情報を収集するために行う臨床試験。
- GQP (Good Quality Practice)
- 「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準」。市販後の医薬品の品質確保について規定した省令。出荷判断基準、製造所の製造管理・品質管理の方法、品質に関する苦情処理の方法などについて定めており、GVPとともに製造販売業の許可要件となっている。
- GVP (Good Vigilance Practice)
- 「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準」。医薬品等の製造販売後の安全管理体制を定めた省令。医薬品等の品質・有効性・安全性に関する事項、その他医薬品等の適正な使用のために必要な情報(「安全管理情報」)の収集と検討、及びその結果に基づく必要な措置(「安全確保措置」)の実施基準を定めており、GQPとともに製造販売業の許可要件となっている。
H-N
- IC (informed consent)
- 「説明同意文書」、「インフォームド コンセント」。十分な説明と理解に基づく同意。同意を得ることだけを指す場合と、説明から同意取得までの一連の行為を指す場合がある。
- ICD (International Classification of Diseases)
- 「国際疾病コード」。WHOで規定された各種疾患の体系的なコード分類。コード(数字)で疾患を表すことができるので治験では有害事象等の集計に便利。
- ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of pharmaceuticals for Human Use)
- 「日米EU医薬品規制調和国際会議」。 日本、米国、欧州連合の三極で、承認に際して要求される資料、及び非臨床試験や治験の枠組みを共通化することによる迅速な承認と省力化を目的として設定された会議。
- IND (Investigational New Drug) application
- 米国における治験届け。米国の治験届出制度では、承認されていない医薬品を使用する臨床試験、あるいは承認後であっても適応拡大または用法・用量の変更を行う臨床試験は、原則として、その開始前にIND申請が必要である。 治験を"IND"、非治験・自主臨床試験を"non IND"と言うことがある。
- in vitro
- 「試験管内で」の意。生体ではなく、組織、臓器、細胞を用いて行う実験。
- in vivo
- 「生体内で」の意。生体を用いて行う実験。
- IRB (institutional review board)
- 「治験審査委員会」参照。
- JALSG (Japan Adult Leukemia Study Group)
- 日本最大の成人白血病を主とした血液悪性疾患の多施設共同研究グループ。
- MTD (maximum tolerated dose)
- 「最大耐用量」。特に抗がん剤第I相試験でDLTの出現により決められる投与量。毒性が認容できる範囲内で最大の投与量となる。抗がん剤では抗腫瘍効果が用量に依存することが期待されるため、MTDが最も有益な投与量と考えられ、第II相試験以降の投与量とされることが多い。
- NCI (National Cancer Institute)
- 米国NIH (National Institute of Health)に設置されている国立がん研究所。有害事象評価に用いられるCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events)、固形腫瘍の縮小判定に用いられるRECIST (Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)等を規定し、開発から臨床試験まで実施する世界最大のがん研究機関。
- NDA (New Drug Application)
- (米国における)承認申請。
- NIH (National Institute of Health)
- 「(米国)国立衛生研究所」。米国の医療、生命研究を管理する機関。予算の配分を行うと共に、自らも多数の研究施設を有する世界最大の研究機関。
- NME (New Molecular Entity)
- 新規化合物。治験において初めて試される新規化合物を指す。
O-P
- open study
- 「非盲検試験」参照。
- OTC (over-the-counter) drug
- 薬局で処方箋無しで購入できる薬剤。処方薬が一定期間試用され、有効性と(特に)安全性に問題が無い場合OTCとして承認されることが多い。例:ガスター
- PD (pharmacodynamics)
- 「薬力学」。組織に分布して作用部位に到達した薬物が生体の機能を修飾し薬理作用を発現する過程を研究する学問。投与量や薬物濃度と薬理学的・臨床的効果との関連を調べる。
- PD (progressive disease)
- 治療行為にもかかわらず、治療前よりも病気が進行または腫瘍が増大した状態。
- PG試験(pharmacogenomic trial)、PGx
- 「ファーマコゲノミクス試験」。被験者のゲノム情報や遺伝子の違いが医薬品の有効性あるいは副作用に及ぼす影響を解析する試験。
- PK (pharmacokinetics)
- 「薬物動態学」。生体による薬物処理の過程(ADME: absorption, distribution, metabolism, and excretion)を解析し、薬物動態を解明する学問。具体的には、薬物投与後の血中濃度の推移、血中濃度半減期、排泄速度などを取り扱う。
- PK/PD (pharmacokinetics/pharmacodynamics)
- PK (pharmacokinetics)とPD (pharmacodynamics)を同時に、あるいは関連づけての検討。
- PL (Product Liability)法
- 「製造物責任法」。製造者が製造、輸入した製造物について、製造物に問題があり、人に被害が及んだ場合には、過失の有無に関わらず損害を賠償する責任がある。製薬企業主導治験の場合には、当該企業にPL法が適用されるので治験審査の際に検討する必要はないが、企業以外が主導する臨床試験(医師主導治験、自主臨床試験)で企業が医薬品の提供のみを行う場合には、PL法が必ずしも適用されない。PL法が適用されない場合に被験者に対する補償をどうするかが問題となる。
- PMDA (Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)
- 「医薬品医療機器総合機構」参照。
- PMS (post-marketing surveillance)
- 「市販後調査」参照。
- POC (proof of concept)
- 新薬等の有効性が実証(確定ではないが認められる)されること。第I相試験だけで実証することは難しいので早期第II相試験まで含める事が多い。その治療方法が有効である可能性の証拠を得る事とも言える。
- PR (partial response)
- 「部分寛解」。固形腫瘍の大きさが一定以上縮小するか、血液腫瘍で白血病細胞が一定の割合以下に減少すること。固形腫瘍では有効性の指標として取り扱われる。
Q-Z
- QA (quality assurance)
- 「品質保証」。治験の実施、データ収集、記録作成、記録保存、報告等の業務がGCP (Good Clinical Practice)や関連規制を遵守 して行われることを保証するために行われる体系的な全活動を指す。QC (quality control)はQAの一部。
- QC (quality control)
- 治験の質を検証するために行われる品質管理活動。QA (quality assurance)に含まれる。
- RCT (randomized controlled trial)
- 「ランダム化比較試験」参照。
- RECIST (Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)
- 固形腫瘍の治療効果判定において、腫瘍縮小を評価するためにNCI (National Cancer Institute)を中心として定められた指標。CTやMRIにおける腫瘍の大きさ(最長径)の変化に基づき有効性をCR (complete remission), PR (partial response), SD (stable disease), PD (progressive disease)と判断する。現在ほとんどの場合、固形腫瘍の縮小判定にはRECISTが使用される。
- RR (response rate)
- 「奏功率」。CR(完全寛解)率とPR(部分寛解)率の和で表される。抗がん剤のサロゲート エンドポイント(surrogate endpoint)とされることが多い。
- SAE (severe adverse event)
- 「重篤な有害事象」参照。
- SD (stable disease)
- 腫瘍の大きさがある一定期間(通常は4週間以上)、元の大きさと変わらない(多少の幅が規定されている)状態。
- SDV (Source Data Verification, Source Document Verification)
- 治験において、モニターが原資料を直接閲覧し、提出されたデータ(主に症例報告書)を原資料と照合・確認し、データの質を保証する作業。
- SMO (Site Management Organization)
- 「治験施設支援機関」。医療機関と契約し、その機関での治験業務を支援する機関。CRO (Contract Research Organization)は製薬企業から、SMOは医療機関からの依頼となる。
- SNP (single nucleotide polymorphism)
- DNAにおいて、塩基配列が1塩基ペア置き換わっている状態。医薬品の効果・安全性の個人差がSNPに関連している可能性があることから、開発段階より研究され始めている。
- SOP (Standard Operating Procedures)
- 「標準業務手順書」。臨床試験では、あらゆる場面で作業の均一化を目的としてSOPを定めることが求められている。ステップ バイ ステップで作業内容が記載されていることが望ましく、業務の質を保証するために継続的な改善が必要とされる。
- TLO (Technology Licensing Organization)
- 「技術移転機関」。大学等の研究者の研究成果を譲り受け、特許化すると共に、その研究成果を企業に移転する機関。知的財産の大学と企業との仲介役。
- TR (translational research)
- 「トランスレーショナル リサーチ」参照。