抗TLR7抗体による炎症性疾患への治療介入
抗TLR7抗体による炎症性疾患への治療介入
Toll like receptor 7(TLR7)は外来微生物由来の一本鎖RNAを認識することで生体防御に関わっています。しかし、自己に由来するRNAにも応答し炎症を引き起こす可能性が指摘されています。実際に、全身性エリテマトーデスモデルマウスにおいて、核酸に対する自己抗体の産生にTLR7が関わっていることが報告されています。また当研究室では、TLRの局在を制御する分子Unc93B1のノックインマウス(Unc93b1D34A/D34Aマウス)がTLR7の自発的な過剰応答によって、脾腫や肝炎、血小板減少症などの病態を引き起こすことを見出しています。そのため、TLR7の応答は厳密に制御される必要があります。自己核酸はヌクレアーゼによって速やかに分解されるが、病原体由来の核酸は菌体膜やウイルス粒子などによって分解を免れ、エンドリソソームにまで到達します。したがって、TLR7は細胞内のエンドリソソームでのみ核酸を認識することで、自己核酸への応答を抑制していると考えられてきました。
我々は生体内のTLR7の挙動を精査するために、TLR7に対するモノクローナル抗体を樹立しました。抗TLR7抗体を用いて、内在性TLR7の発現を解析したところ、マクロファージや樹状細胞表面にも発現していることが明らかになりました。TLR7の細胞表面発現はUnc93B1機能欠損マウスである3dマウスでは検出されません。そのため、Unc93B1がTLR7の細胞表面発現にも必須であると考えられます。さらに、骨髄細胞から誘導したマクロファージ及び樹状細胞におけるTLR7依存的サイトカイン産生を、この抗体は濃度依存的に抑制することも見出しています。そこで、抗TLR7抗体が、TLR7依存性の病態を制御するのかを検討するために、Unc93b1D34A/D34Aマウスへの継続的な抗TLR7抗体投与を行いました。その結果、コントロール抗体投与群と比較して、抗TLR7抗体投与群では血小板減少や脾腫、肝炎が有意に改善されました。
従来、TLR7は細胞内部にのみ存在するとされていたため、抗体医薬を外から加えても、抑制はできないと予想されていました。しかし、我々の研究結果ではTLR7は細胞表面にも存在し、これを標的とした抗体によってTLR7応答を制御しうることを示すことができました。