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プライム型多能性幹細胞からナイーブ型多能性幹細胞の新規変換法を開発

プライム型多能性幹細胞からナイーブ型多能性幹細胞の新規変換法を開発

Stem Cell Reports Vol. 4, 1-11, January 13, 2015 DOI: 10.1016/j.stemcr.2014.12.003
村山 秀之1、正木 英樹1、佐藤 秀征1、葉山 智工1、山口 智之1、中内 啓光1
1.東京大学医科学研究所・幹細胞治療分野
Successful Reprogramming of Epiblast Stem Cells by Blocking Nuclear Localization of β-Catenin

二種類以上の異なる個体の細胞が混ざったキメラ動物は、遺伝子改変動物の作製を容易にします。たとえば、キメラマウスは、多能性状態にあるマウスの胚性幹細胞(ESC)を着床前の胚に移植することで作製できます。一方で、生体の様々な細胞を作り出せる多能性幹細胞には、ESCのほかに、より発生段階の進んだエピブラスト幹細胞(EpiSC)もあります。マウスEpiSCは、着床後の胚である卵筒胚のエピブラストから作製され、胚盤胞に移植してもキメラ個体を形成できない点で異なります。また、げっ歯類以外のヒトを含めた動物種のESCはその特徴がマウスEpiSCと類似していることが知られており、これに対応するようにげっ歯類以外ではESC由来のキメラ動物は作製されていません。
東京大学医科学研究所附属幹細胞治療研究センターの中内啓光教授、同 正木英樹特任研究員、東京大学大学院医学系研究科の村山秀之博士課程大学院生らの研究グループは、マウスのEpiSCに、細胞の接着因子であるE-cadherin(イーカドヘリン)を過剰に発現させること、または化合物を添加すること、によってβ-catenin(ベータカテニン)が核へ移行することを抑制してESC様の状態へと短期間で高効率に変換させることを発見しました。
これまでの知見では、β-cateninの核への移行を促進することがESC様の状態の維持に有用であると広く認識されていましたが、本研究成果はこれとは異なる結果を示しています。今後、この変換におけるβ-cateninの役割を再検証することで、げっ歯類以外の動物種において着床後でも多能性状態にある幹細胞を着床前の多能性状態へ変換する条件が最適化され、新規な多能性幹細胞の開発に繋がることが期待されます。

  本研究はJST 戦略的創造研究推進事業の一環として行われ、本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。 戦略的創造研究推進事業 研究プロジェクト課題名:「中内幹細胞制御プロジェクト」 研究総括:中内 啓光(東京大学医科学研究所 教授) 研究期間:平成19~24年度 JSTはこのプロジェクトで、臓器発生過程の基礎的研究と、その知見に基づいた臓器再生法確立のための新技術の研究を行っています。