ピロリ菌ゲノムからわかった遺伝子誕生の新しいしくみ
ピロリ菌ゲノムからわかった遺伝子誕生の新しいしくみ
PNAS January 6, 2011. (オンライン)
遺伝子の誕生と崩壊は、進化の鍵となる過程ですが、その仕組みについてはよく解っていませんでした。
人類の半数の胃に住み着いているピロリ菌は、胃炎、胃潰瘍を起こします。「胃がん大国」日本の株は、がんを起こす病原性の強い「悪玉菌」と見られています。私たちは、ピロリ菌日本株4のゲノムを解読し、世界各地のものと比較し、この生物種のゲノムの進化を再構成しました。
ある遺伝子がヨーロッパ株では1つなのに日本株では2つに増えていること(「重複」)がわかりました。また、ゲノム全体をヨーロッパ株のものと比べると、日本株ではゲノムの一部が「逆位」を起こした(反転した)形になっていました。そして、遺伝子の重複はちょうどこの逆位の付け根で起きていました。
配列を調べると、「DNAの逆位に伴って遺伝子(DNA)の重複が起きる」というしくみが推測できました。さらに、遺伝子の「誕生」だけでなく「崩壊」も、このしくみで起きていました。
ゲノムの解読技術の革新のおかげで、ゲノム情報が爆発的に増えています。この結果は、それらを比較してゲノムの進化を考える上での手がかりになるでしょう。とくに、がん細胞ではゲノムに様々な構造変化が起きていることがわかってきましたが、このしくみが働いて、遺伝子が誕生したり壊れたりしているのかもしれません。
Nature で紹介されました。http://www.nature.com/nature/journal/v469/n7329/full/469135d.html