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世界初、体内に存在する老化の原因となる細胞の解析に成功

解説

東京大学医科学研究所に所属する博士課程1年、大森徳貴大学院生、博士課程3年、王德瑋大学院生、城村由和助教、中西真教授(癌防御シグナル分野)、山田泰広教授(先進病態モデル研究分野)、古川洋一教授(臨床ゲノム腫瘍学分野)、井元清哉教授(健康医療インテリジェンス分野)らの研究グループは、老化細胞のマーカー遺伝子であるp16遺伝子(注1)に着目し、世界で初めて、一細胞レベルで老化細胞を検出・解析可能なマウスを作製しました。

その結果、様々な臓器において老化細胞は存在し、増殖はしないものの加齢に伴いその数が増大することがわかりました。またシングルセルRNA-seq(注2)解析から、老化細胞は臓器や細胞の種類に依存して多様な性質を示すことが明らかになりました。さらに老化細胞の除去により、非アルコール性脂肪肝炎(NASH、注3)による脂肪化や炎症が顕著に改善されました。

本研究成果により、老化を制御する分子基盤が明らかとなり、さらには加齢現象のみならず“がん”や“動脈硬化”などの様々な老年病の予防・治療技術の開発が期待されます。

本研究成果は、2020年9月18日(米国東部夏時間)に、米国の国際医科学雑誌「Cell Metabolism」オンライン版に公開されました。

(注1)p16 遺伝子
 細胞周期の進行を制御する、CDK4およびCDK6キナーゼを特異的に阻害するタンパク質。老化細胞で特異的に発現増加することから、老化細胞マーカーとして利用されている。

(注2)シングルセルRNA-seq
一細胞ごとにmRNAの発現量を検出する手法。

(注3)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
アルコール非依存的に肝臓に脂肪が蓄積し炎症や線維化が起きてしまう疾病。進行すると肝硬変や肝臓がんになる。

プレスリリース

論文情報

"世界初、体内に存在する老化の原因となる細胞の解析に成功ーGeneration of a p16 reporter mouse and its use to characterize and target p16hight cells in vivoー"

Cell Metabolism オンライン版 2020年9月18日 doi:10.1016/j.cmet.2020.09.0006

Satotaka Omori#, Teh-Wei Wang#, Yoshikazu Johmura*, Tomomi Kana, Yasuhiro Nakano, Taketomo Kido, Etsuo A Susaki, Takuya Nakajima, Shigeyuki Shichino, Satoshi Ueha, Manabu Ozawa, Kisho Yokote, Soichiro Kumamoto, Atsuya Nishiyama, Takeharu Sakamoto, Kiyoshi Yamaguch, Seira Hatakeyama, Eigo Shimizu, Kotoe Katayama, Yasuhiro Yamada, Satoshi Yamazak, Kanako Iwasaki, Chika Miyoshi, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa, Hiroo Ueno, Seiya Imoto, Yoichi Furukawa, Nobuaki Yoshida, Kouji Matsushima, Hiroki R Ueda, Atsushi Miyajima, and Makoto Nakanishi* (#共同第一著者、*共同責任著者)。
 

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