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細胞記憶継承をDNA複製と協調するメカニズムの解明
―DNAメチル化酵素をDNA複製部位に正確に配置する新たな仕組み―

細胞記憶継承をDNA複製と協調するメカニズムの解明
DNAメチル化酵素をDNA複製部位に正確に配置する新たな仕組み―

Nature communications(2020年3月6日オンライン版) DOI番号:10.1038/s41467-020-15006-4
Atsuya Nishiyama*, Christopher B. Mulholland, Sebastian Bultmann, Satomi Kori, Akinori Endo, Yasushi Saeki, Weihua Qin, Carina Trummer, Yoshie Chiba, Haruka Yokoyama, Soichiro Kumamoto, Toru Kawakami, Hironobu Hojo, Genta Nagae, Hiroyuki Aburatani, Keiji Tanaka, Kyohei Arita*,  Heinrich Leonhardt* and Makoto Nakanishi*(*corresponding author)
 Two distinct modes of DNMT1 recruitment ensure stable maintenance DNA methylation
https://www.nature.com/articles/s41467-020-15006-4

東京大学医科学研究所癌防御シグナル分野の中西真教授、西山敦哉准教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科構造生物学研究室の有田恭平准教授、ミュンヘン大学Heinrich Leonhardt博士らの共同研究グループはDNAメチル化を制御する新たな仕組みを発見しました。

 ヒトの体を形成する個々の細胞は全て同じ遺伝情報を持っていますが、各細胞の特性は大きく異なり、その数は300種類を超えると言われています。それぞれの細胞の特性は、DNAにおこる化学修飾であるDNAメチル化によって決まっています。DNAメチル化は細胞内の遺伝子の使い方を示す目印であり、細胞の記憶として働きます。細胞記憶として働くDNAメチル化が正確に継承されることは細胞の正常な増殖に必要ですが、その仕組みは明らかではありませんでした。

 今回、共同研究グループはPAF15タンパク質のユビキチン化が、DNAメチル化の継承に重要であることを発見しました。さらに、PAF15がユビキチン化される仕組みや、その生物学的意義について示すことにも成功し、細胞の記憶が引き継がれていく基本的な原理を明らかにしました。本研究の成果は、細胞記憶維持のメカニズムを解明したとともに、新たなDNAメチル化酵素の阻害剤の開発など、この分野の応用にも大きく寄与するものと期待されます。