前立腺がんの「ゲノム医療」に貢献 -日本人での原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴の大規模解析-
前立腺がんの「ゲノム医療」に貢献 -日本人での原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴の大規模解析-
理化学研究所(理研)生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、東京大学医科学研究所の村上善則教授、栃木県立がんセンターゲノムセンターの菅野康吉ゲノムセンター長、国立がん研究センターの吉田輝彦遺伝子診療部門長らの国際共同研究グループは、世界最大規模となる約2万人の DNA を解析して、日本人遺伝性前立腺がんの原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴について明らかにしました。
本研究成果は、日本人の前立腺がん患者一人一人に合った治療を行う「ゲノム医療」に貢献すると期待できます。
前立腺がんは日本人男性で4番目に患者数の多いがんであり、乳がんなどと同様に、そのうち数%程度の患者は一つの病的バリアント(個人間での1カ所のゲノム配列の違い)が発症の原因になると考えられています。しかし、前立腺がんは乳がんと異なり大規模なデータがほとんどなく、ゲノム情報を用いた医療の妨げになっていました。
今回、国際共同研究グループは、前立腺がんの原因と考えられる8個の遺伝子について、バイオバンク・ジャパンにより収集された前立腺がん患者7,636人および対照群12,366人のDNAを、独自に開発したゲノム解析手法を用いて解析しました。その結果、136個の病的バリアントを同定し、病的バリアント保有者は患者の2.9%であること、BRCA2、HOXB13、ATMの3遺伝子が発症に関わっていること、病的バリアント保有者の臨床的特徴などを明らかにしました。
今後、これらのデータは国内外の公的データベースに登録、活用される予定です。
本研究は、米国の科学雑誌『Journal of the National Cancer Institute』のオンライン版(6月19日付け、日本時間6月20日)に掲載されました。