上皮細胞間リンパ球の腸管への遊走における異なるスフィンゴシン1リン酸依存性
上皮細胞間リンパ球の腸管への遊走における異なるスフィンゴシン1リン酸依存性
J Exp Med 204: 2335-2348, 2007
腸管を始めとする粘膜組織には、粘膜組織特有の免疫担当細胞が存在する。そのうちの一つである上皮細胞間リンパ球は、αβ型T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞に加え、γδ型TCRを発現するT細胞(γδT細胞)を多く含むことで、生体の最前線である上皮細胞層における生体防御と免疫学的恒常性維持を行っている。
今回、我々は胸腺から腸管への遊走におけるスフィンゴシン1リン酸依存性により、上皮細胞間リンパ球は二つの集団に分類されることを示した。スフィンゴシン1リン酸は、脂質メディエーターの一つであり、リンパ球の胸腺や二次リンパ節からの移出を制御する分子として注目されている。αβ型TCRを発現するCD4もしくはCD8αβ陽性上皮細胞間リンパ球は、胸腺でシングルポジティブ細胞へと分化した後、スフィンゴシン1リン酸依存的に腸管へ遊走する。そのためスフィンゴシン1リン酸を介したシグナルを遮断すると、腸管上皮層においてこれらの細胞の減少が観察される。
一方、γδT細胞の主要構成細胞となっているCD8αα陽性上皮細胞間リンパ球は、TCR発現ダブルネガティブ胸腺細胞を前駆細胞とするが、TCR発現ダブルネガティブ胸腺細胞はスフィンゴシン1リン酸非依存的に胸腺を移出し、腸管へと遊走する。すなわち上皮細胞間リンパ球はスフィンゴシン1リン酸依存的に腸管へ遊走するCD4もしくはCD8αβ陽性細胞と、非依存的遊走経路を用いるCD8αα陽性細胞に分類される。これらの結果は、外来異物が常時接している腸管上皮細胞層において、免疫学的多様性をもたらすための一つの重要な経路であると考えられる。