日本人に多いEGFR変異を持つ肺腺がんの罹りやすさを決める遺伝子領域発見 免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与
日本人に多いEGFR変異を持つ肺腺がんの罹りやすさを決める遺伝子領域発見 免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与
Nature Communications, 2016, on line publication. DOI: 10.1038 / NCOMMS12451
本研究では、国立がん研究センターバイオバンクやオーダーメイド医療実現化プロジェクト(バイオバンクジャパン)、神奈川県立がんセンター、群馬大学、秋田大学などで収集された日本人の肺腺がんの患者(EGFR変異陽性がん3,173例、EGFR変異陰性がん3,694例)と、がんに罹患していない対照15,158例の血液・非がん組織DNAについて、全ゲノム領域にわたる70万個の遺伝子多型の比較解析を行いました。
その結果、6つの遺伝子領域の個人差がEGFR変異陽性の肺腺がんへの罹りやすさを決めていることを明らかにしました 。その中には、免疫反応の個人差の原因となるHLAクラスII遺伝子領域が含まれていました(図:赤字)。
特にHLAクラスII遺伝子産物のうちの一つであるHLA-DPB1タンパク質の57番目のアミノ酸の置換を起こす多型が、EGFR変異陽性の肺腺がんの罹りやすさを決める原因多型のひとつと考えられます。HLA遺伝子群の個人差は臓器移植における適合性など、免疫反応の個人差の原因となるものです。また、その個人差の分布は、人種によって大きく異なっています。よって、EGFR遺伝子に変異を起こした細胞に対する免疫反応の違いなど、いくつかの遺伝子の個人差による生体反応の個人差が、EGFR変異陽性肺腺がんへの罹りやすさを決めていると考えられます。