腫瘍由来循環DNAによる急性骨髄性白血病の骨髄移植後再発の予測
腫瘍由来循環DNAによる急性骨髄性白血病の骨髄移植後再発の予測
Blood 2019年4月1日オンライン版掲載
急性骨髄性白血病(AML)は骨髄移植を行ってもなお再発の多い疾患として知られています。そのため早期に再発予測が可能な検査法の開発が望まれています。しかし、従来の骨髄を用いた検査法は、侵襲性が高く、頻回の検査が行えないという致命的な問題があり、再発予測には限界がありました。近年、遺伝子解析技術の進歩により、症例毎に異なるAML発症の原因となるドライバー変異を特定することができるようになりました。さらに血清中に存在する腫瘍由来循環DNA (ctDNA)を用いた非侵襲的な検査法も普及してきていますが、AMLについての研究は殆ど行われておらず、その有用性は明らかではありませんでした。
今回、東京大学医科学研究所分子療法分野東條有伸教授、横山和明助教、中村聡介大学院生、ヒトゲノム解析センター宮野悟教授、ヘルスインテリジェンスセンター井元清哉教授らの臨床シークエンスグループは、AMLの移植例において、症例毎に異なるAMLのドライバー変異の情報を基に、移植後の血清検体を用いてctDNAの検出を試みました。そしてctDNAが検出される症例では、有意に再発率が高く予後不良であることを明らかにしました。さらに、血清由来のctDNAを用いた再発予測性能は、骨髄を用いた場合と同等である事を証明しました。これらは今後のctDNAを用いた非侵襲的な遺伝子検査法の社会実装に繋がることが期待される研究です。
本研究成果は2019年4月1日にBlood誌にオンライン公開されました。