細菌型 Sec トランスロコン の構造から明らかとなったタンパク質膜透過装置の構造変化
細菌型 Sec トランスロコン の構造から明らかとなったタンパク質膜透過装置の構造変化
細胞内では常に多種多様のタンパク質が細胞質で合成され,各細胞内小器官へと運ばれたり,細胞表面に分泌され機能します。このため,すべての生物に共通して生体膜には Sec トランスロコンと呼ばれるタンパク質膜透過装置が存在しています。細菌においては,膜タンパク質 SecYE 複合体 が タンパク質の通り道となるチャネル(Sec トランスロコン)を形成しており,タンパク質の膜透過は SecYと相互作用するモータタンパク質 SecA ATPase によって駆動されます。タンパク質の膜透過は,あらゆる生物でごく一般に起こっている基本的な生命現象にもかかわらず,そのメカニズムの詳細は不明な点が多く残されています。本研究では,細菌型 SecYE の構造をX線結晶構造解析によって解明し,その構造をもとに解析を進めました。その結果,Sec トランスロコンはタンパク質の膜透過にともなって少なくとも2つの状態(プレオープン型とクローズド型)をとることが明らかとなりました(図1 Secトランスロコンの構造)。
プレオープン型ではクローズド型と異なり、細胞質側の矢印で示した部位に疎水性の凹みが存在し,膜透過する基質タンパク質との相互作用部位を形成していると考えられます。また,このプレオープン構造は SecAの結合によって,クローズド型から誘起することも明らかにしました。更に,SecA 側も SecY との結合によって構造が変化し,SecA が活性化状態になることを示しました。
以上の結果より,図2(SecYE-SecA 間相互作用)に示すように,タンパク質膜透過反応の初期において,SecYE と SecA が相互作用することでお互いが構造変化し,活性化状態となるモデルを提唱しました。今後,さらなる解析を進めタンパク質膜透過機構の全容が明らかになることが期待されます。