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概要
岡山大学学術研究院教育学域(特別支援教育)の大守伊織教授、学術研究院医療開発領域(岡山大学病院 腎臓・糖尿病・内分泌内科)の内田治仁教授(特任)ならびに東京大学医科学研究所 先進動物ゲノム研究分野の真下知士教授らの研究グループは、細胞が“サビつく”ような酸化ダメージから体を守るタンパク質「チオレドキシン」※5)の働きが弱くなると、慢性腎臓病が自然に進行することを、ラットを用いて明らかにしました。このラットでは、腎臓の働きが少しずつ悪くなり、尿タンパク、高血圧に加え、腎機能の低下につながる線維化が認められるなど、人の慢性腎臓病に似た変化がみられました。さらに、腎臓の細胞でエネルギーを作るミトコンドリアの異常、細胞死、炎症が重なって起こることも分かりました。本研究成果は、2026年6月12日にTranslational Research誌にオンライン掲載されました。慢性腎臓病は、日本でも成人のおよそ5人に1人が該当するとされる身近な病気です。今回見つかったラットは、慢性腎臓病が進む仕組みを調べる新しいモデルとなり、将来、酸化ダメージやミトコンドリアを標的とした治療法の開発に役立つことが期待されます。
研究者からのひとこと
慢性腎臓病は、気づかないうちに進行し、最終的には透析や腎移植が必要になることもある重大な病気です。私たちは真下教授とともに、もともと神経症状を示すラットを調べていましたが、長期間観察する中で、腎臓に非常に強い変化が起こることに気づきました。今回の成果は、体をサビ(酸化ストレス)から守る仕組みが、腎臓の健康維持にどれほど重要かを示すものです。このモデルを活用して、共同研究を推進し、慢性腎臓病の進行を止める新しい研究につなげたいと考えています。
発表内容
<現状>
慢性腎臓病は、腎臓の働きがゆっくりと低下し弱っている状態です。慢性腎臓病が進行すると、体の中の老廃物や水分を十分に排出できなくなり、透析や腎移植が必要になることがあります。また、慢性腎臓病の患者さんは、脳・心血管病を発症しやすくなり、場合によっては命にかかわることもあります。慢性腎臓病の発症や重症化には、糖尿病、高血圧、加齢などさまざまな原因が関わりますが、腎臓の細胞にたまる酸化ストレスや、細胞のエネルギーを作るミトコンドリアの異常も重要と考えられています。しかし、これらがどのように慢性腎臓病を進行させるのかを、生体内で詳しく調べられる動物モデルは限られていました。
<研究成果の内容>
本研究グループは、チオレドキシンという酸化ストレスから細胞を守るタンパク質の働きが低下したラットを長期間観察しました。その結果、このラットは、従来のモデル動物で必要な薬剤投与や手術を行わなくても、自然に慢性腎臓病を発症することが分かりました。血液検査では腎機能低下、低アルブミン血症、高コレステロール血症がみられ、尿検査では尿タンパクや尿潜血が認められました。腎臓を顕微鏡で調べると、尿細管の障害、間質の線維化、糸球体硬化が広範囲にみられました。さらに、遺伝子発現解析や電子顕微鏡観察により、近位尿細管でミトコンドリアの減少と形の異常が起こり、細胞死、炎症、線維化が同時に進行していくことが明らかになりました。
<社会的な意義>
本研究で見つかったラットは、人の慢性腎臓病に似た特徴を自然に示す新しいモデルです。慢性腎臓病の進行には、腎臓の細胞が傷つくだけでなく、炎症や線維化が複雑に関わります。このモデルを用いることで、病気のどの仕組みを抑えれば腎臓を守れるのかを調べやすくなります。将来的には、酸化ストレスを抑える治療、ミトコンドリアを守る治療、細胞死を抑える治療など、新しい治療法の開発に役立つことが期待されます。
なお、本研究は岡山大学動物実験委員会の承認を経て実施されました。
慢性腎臓病は、腎臓の働きがゆっくりと低下し弱っている状態です。慢性腎臓病が進行すると、体の中の老廃物や水分を十分に排出できなくなり、透析や腎移植が必要になることがあります。また、慢性腎臓病の患者さんは、脳・心血管病を発症しやすくなり、場合によっては命にかかわることもあります。慢性腎臓病の発症や重症化には、糖尿病、高血圧、加齢などさまざまな原因が関わりますが、腎臓の細胞にたまる酸化ストレスや、細胞のエネルギーを作るミトコンドリアの異常も重要と考えられています。しかし、これらがどのように慢性腎臓病を進行させるのかを、生体内で詳しく調べられる動物モデルは限られていました。
<研究成果の内容>
本研究グループは、チオレドキシンという酸化ストレスから細胞を守るタンパク質の働きが低下したラットを長期間観察しました。その結果、このラットは、従来のモデル動物で必要な薬剤投与や手術を行わなくても、自然に慢性腎臓病を発症することが分かりました。血液検査では腎機能低下、低アルブミン血症、高コレステロール血症がみられ、尿検査では尿タンパクや尿潜血が認められました。腎臓を顕微鏡で調べると、尿細管の障害、間質の線維化、糸球体硬化が広範囲にみられました。さらに、遺伝子発現解析や電子顕微鏡観察により、近位尿細管でミトコンドリアの減少と形の異常が起こり、細胞死、炎症、線維化が同時に進行していくことが明らかになりました。
<社会的な意義>
本研究で見つかったラットは、人の慢性腎臓病に似た特徴を自然に示す新しいモデルです。慢性腎臓病の進行には、腎臓の細胞が傷つくだけでなく、炎症や線維化が複雑に関わります。このモデルを用いることで、病気のどの仕組みを抑えれば腎臓を守れるのかを調べやすくなります。将来的には、酸化ストレスを抑える治療、ミトコンドリアを守る治療、細胞死を抑える治療など、新しい治療法の開発に役立つことが期待されます。
なお、本研究は岡山大学動物実験委員会の承認を経て実施されました。
論文情報
論 文 名: A novel spontaneous rat model of chronic kidney disease with mitochondrial dysfunction driven by thioredoxin insufficiency
掲 載 誌: Translational Research
著 者: Iori K. Ohmori, Mamoru Ouchida, Yoshiko Hada, Haruhito A. Uchida, Shinya Toyokuni, Tomoji Mashimo.
D O I: 10.1016/j.trsl.2026.06.003
U R L: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931524426001143
掲 載 誌: Translational Research
著 者: Iori K. Ohmori, Mamoru Ouchida, Yoshiko Hada, Haruhito A. Uchida, Shinya Toyokuni, Tomoji Mashimo.
D O I: 10.1016/j.trsl.2026.06.003
U R L: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931524426001143
研究資金
本研究は、科学研究費助成事業(JP22K07914)、東京大学医科学研究所共同利用・共同研究拠点事業(2022-2011、2025-1156)、学術変革領域研究 学術研究支援基盤形成(先端モデル動物支援プラットフォーム)の支援を受けて実施しました。
補足・用語説明
※1)酸化ストレス:体の中で発生する活性酸素などによって、細胞が傷つきやすくなる状態です。金属が酸化してサビるように、私たちの体の中でも、酸素を使って生きていく過程で、細胞に少しずつダメージが加わることがあります。通常は、体に備わった酸化ストレスへの防御機構がこのダメージを抑えていますが、その働きが弱くなると、細胞の傷害が蓄積し、臓器の障害につながることがあります。※2)慢性腎臓病:腎臓の働きが、長い時間をかけて少しずつ悪くなっている病気です。腎臓は、血液をきれいにし、体にいらないものや余分な水分を尿として外に出しています。慢性腎臓病が進むと、この働きがうまくできなくなります。「約8人に1人」という割合でしたが、最新の推計では「5人に1人」にのぼるとされており、決して珍しい病気ではありません。初期には自覚症状が少ないため気づきにくく、進行すると透析や腎移植が必要になることがあります。
※3)ミトコンドリア:細胞の中でエネルギーを作る小さな構造です。腎臓の尿細管は多くのエネルギーを必要とするため、ミトコンドリアの異常の影響を受けやすいと考えられます。
※4)線維化:傷ついた組織が硬くなり、本来の働きが低下する状態です。腎臓で線維化が進むと、腎機能の回復が難しくなります。
※5)チオレドキシン:細胞を酸化ストレスから守るタンパク質の一つです。
お問い合わせ
<研究に関するお問い合わせ>岡山大学学術研究院教育学域(特別支援教育)
教授 大守(川﨑) 伊織
https://soran.cc.okayama-u.ac.jp/html/4f6bb4c422e9a10774506e4da22f6611_ja.html
東京大学医科学研究所
附属実験動物研究施設 先進動物ゲノム研究分野
教授 真下 知士
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/lab/animalresearch/section01.html
<広報に関するお問い合わせ>
岡山大学総務部広報課
https://www.okayama-u.ac.jp/
東京大学医科学研究所 プロジェクトコーディネーター室(広報)
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/

