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概要
東京科学大学(Science Tokyo)*大学院医歯学総合研究科 眼科学分野の鴨居功樹講師、大野京子教授と東京大学 大学院新領域創成科学研究科 病態医療科学分野の内丸薫教授らの研究チームは、東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科(東京大学医科学研究所 附属先端医療研究センター 造血病態制御学分野)の南谷泰仁教授、東條有伸元病院長(現東京科学大学 副理事・副学長)、聖マリアンナ医科大学血液・腫瘍内科の渡邉俊樹特任教授と共同で、若年者を対象にした検討を進めた結果、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)(用語1)の水平感染(性感染)(用語2)による疾患発症(ぶどう膜炎)が、短い潜伏期間・低いプロウイルスロード(感染細胞率)(用語3)で生じ、再発を繰り返し遷延する可能性があることを発見しました。*2024年10月1日に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、東京科学大学(Science Tokyo)となりました。
本成果は、「HTLV-1感染症は垂直感染(母子感染)(用語4)経路により、長い潜伏期間(用語5)の後、中高年に発症する」という従来の認識とは異なり、「水平感染経路では短い潜伏期間で疾患が発症する」というメカニズムを示唆するとともに、「若年者」における水平感染による疾患発症の存在を明らかにしました。
HTLV-1感染症は垂直感染だけでなく、水平感染の観点からも注意喚起する必要があることから、公衆衛生上の戦略を見直す必要性と、性的活動が活発となる若年層への啓発の重要性を提言しました。
本成果は、10月10日付(米国東部時間)の「Journal of Medical Virology」誌に掲載されました。
用語解説
(1) HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型):成人T細胞白血病やHTLV-1関連脊髄症、HTLV-1ぶどう膜炎などを引き起こすウイルス。
(2) 水平感染(性感染):垂直感染以外の感染経路。性的接触・血液接触による感染など。
(3) プロウイルスロード(感染細胞率):全リンパ球中のHTLV-1感染細胞の含有率。
(4) 垂直感染(母子感染):病原体が母親から子供へ直接感染する経路。経母乳感染、産道感染など。
(5) 潜伏期間:感染から症状が出るまでの期間。
論文情報
掲載誌:Journal of Medical Virology論文タイトル:Sexual transmission of HTLV-1 resulting in uveitis with short-term latency and low proviral load
著者:Koju Kamoi*, Kaoru Uchimaru, Yasuhito Nannya, Arinobu Tojo, Toshiki Watanabe, Kyoko Ohno-Matsui
DOI:10.1002/jmv.70000
URL : https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.70000
研究者プロフィール
鴨居 功樹(カモイ コウジュ) Koju Kamoi
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 眼科学分野 講師
研究分野:HTLV-1感染症、眼感染症、眼炎症、眼科手術
内丸 薫(ウチマル カオル) Kaoru Uchimaru
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 病態医療科学分野 教授
研究分野:HTLV-1感染症、血液内科学
南谷 泰仁(ナンヤ ヤスヒト) Yasuhito Nannya
東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科 教授
研究分野:血液内科学
(東京大学医科学研究所
附属先端医療研究センター 造血病態制御学分野 教授)
大野 京子(オオノ キョウコ) Kyoko Ohno-Matsui
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 眼科学分野 教授
研究分野:近視、網膜疾患
お問い合わせ先
(研究に関すること)東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 眼科学分野 講師
鴨居 功樹
https://tmdu-ganka.jp/about/staff.php
(報道取材申し込み先)
東京科学大学 総務企画部 広報課
申し込みフォーム:https://forms.office.com/r/F3shqsN7zY
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 広報室
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東京大学医科学研究所 プロジェクトコーディネーター室(広報)
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/