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岩間厚志所長就任挨拶(2025年04月01日)

岩間厚志所長 所員の皆様、本日はお忙しい中お時間を賜り、誠に有難うございます。
本日、第30代の所長に就任致しました岩間厚志でございます。この歴史ある医科学研究所(医科研)の所長を拝命し大変光栄に思うとともに、その重責に身が引き締まる思いであります。所長就任に当たり、ご挨拶を申し上げます。
 
まず初めに、前所長の中西真先生には2年間医科研の舵取りにご尽力いただきましたこと、深く感謝申し上げます。中西先生が就任されて間もない2023年5月には、4年間もの間大きな社会的問題として立ちはだかったCOVID-19が5類感染症に分類されました。中西先生は、ポストコロナにおける医科研の研究活動の活性化に多大なリーダーシップを発揮されました。その結果として、現在の活発な研究活動が実現されております。また、後ほどご説明致しますが、国際卓越研究大学制度の開始に伴って近々訪れるであろう大学の教育・研究システムの変革に準備すべく、大学本部と医科研の連携のありようについて模索され、その成果が次の執行部へと引き継がれようとしております。そのご苦労を間近に見てきたものとして、心より感謝申し上げます。
 
中西執行部以前には、私は第28代所長である山梨裕司先生のもと、4年間経理系副所長を務めさせていただきました。まさにCOVID-19の渦中にあったこの期間は、山梨先生の適切なご判断により大きな混乱や感染の拡大を見ることなく着実に研究活動が維持され、病院におけるコロナ対策や研究者の皆様の卓越した研究成果により、医科研のプレゼンスが広く認知されることとなりました。一方でこの2年間は、病院へのコロナ助成金の打ち切りなどによるポストコロナにおける病院経営への懸念から、中西前所長より病院担当副所長を拝命し、藤堂具紀前病院長をはじめ病院の先生方、医療従事者や事務系の方々と一緒に仕事をさせていただきました。藤堂前病院長の卓越したリーダーシップにより、医科研病院は今までにも増して活性化し、新たな時代に踏み出しつつあります。藤堂前病院長、南谷泰仁副病院長、小粥美香看護部長、黒田誠一郎薬剤部長、尾崎正明病院課長をはじめとして、病院の関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。
 
さて、ここで私の簡単な自己紹介をさせていただきます。私は昭和62年に新潟大学医学部を卒業し、内科初期研修後、自治医科大学の血液内科のシニアレジデント・助手として診療に従事しました。平成4年に熊本大学医学部の助手として血液学の基礎研究を開始し、アメリカ留学を経て、その当時筑波大学医学部におられた中内啓光先生の免疫学教室に帰国し、中内先生の医科研への異動に伴い平成14年に医科研に講師として赴任致しました。その後平成17年に千葉大学医学研究院に教授として赴任し、平成30年に医科研に戻ることとなり、それ以降、幹細胞治療研究センター幹細胞分子医学分野を担当致しております。研究は一貫して血液学で、造血幹細胞研究や造血腫瘍研究を行っております。23年前に医科研の中内研究室におりましたのは3年間だけでしたが、とても楽しく研究に専念することができましたし、研究所の個性豊かな先生方のレベルの高い研究に非常に刺激を受けたことが思い出されます。縁があって13年後に医科研に戻ることになりとてもうれしく思いましたし、その自由に研究を行うことができる雰囲気や環境は相変わらずでしたので、これぞ医科研と感じ入ったものです。この雰囲気を維持するのがとても大切なことなのだと思います。
 
さて、医科研をとりまく情勢で最も大きな関心事は国際卓越研究大学構想であります。文部科学省が進める国立大学法人改革の一環として、東京大学も「指定国立大学法人」に指定され、世界最高水準の教育研究活動を目指す改革が進められてきたところですが、国際卓越研究大学では、大学ファンドによる金銭的支援を受けて、世界最高水準の研究環境の整備と人材の結集により、世界最高レベルの研究大学を構築することを目標にしています。昨年度東北大学が初めて採択され、急ピッチで大学改革が進められようとしています。東京大学も採択を目指し様々な議論がなされてきました。研究面における改革の中核は、研究組織や研究分野の壁をこえた研究体制を構築して新しい研究分野を創生し、次世代の人材を育成することにあり、東京大学が認定されれば、この改革の荒波は待ったなしに医科研に打ち寄せてまいります。これまでとは異なる研究体制の変革を迫られることになりますが、肝要なことは、いかに医科研の研究力をそぐことなく発展的に改革が行えるかにあります。大学全体の流れにのみ込まれることなく、医科研にふさわしい方向性を見出していきたいと思います。また、この改革を成功させるには、改革の実行性を担保する研究環境の充実と優秀な人材を医科研にお呼びするための戦略的な人事の推進が重要です。所員の皆様には、課題の共有と継続的な議論により真の意味での熟議ができるよう、ご協力をお願い申し上げます。
 
このような変革期の中、これまでに確立してきた研究体制の維持・発展がこれまで以上に重要になります。ご存知のように医科研は附置研究所の中で、生命科学系では唯一の国際共同利用・共同研究拠点に認定され、医科研が国内外の研究機関のハブとなり、国際的な共同研究が活発に進められております。国際共同研究は、研究レベルの向上や若手人材育成の強力な駆動力となるものであり、医科研がその一翼を担うことは医科研の責務であるとともに、医科研の世界的なプレゼンスを高めるものであります。この国際共同利用・共同研究拠点の活動を維持・発展させるために、所員の皆様のこれまで以上のご協力をお願い申し上げます。 
 
さらに、老朽化しつつある動物センターの発展的改築は待ったなしの課題です。前執行部ですでにその対策が進められ方向性が定まりつつあります。また、本部主導の白金台キャンパスにおける土地有効活用に医科研も参加することにより、看護宿舎とラボ&オフィス棟の整備構想が進みつつあります。これらの実現に向けてしっかりと対策を進めてまいります。
 
以上のように、医科研を取り巻く状況は、刻々と変わりつつあります。ここに克服すべき多くの課題にともに取り組んでいただく医科研の中核メンバーを御紹介致します。

まず、副所長ですが、総務系担当として武川睦寛教授に、経理系担当として川口寧教授に、支援系担当として真下知士教授にご就任いただきました。武川教授、川口教授は村上善則元所長と中西前所長の時からの再任となります。真下教授も実験動物研究施設長を始め諸事お忙しい中お引き受けいただきました。事務部長は須藤桂太郎部長が留任されます。また、事務部につきましては、圷陽子管理課長、尾崎病院課長が留任され、大浦輝一研究支援課長を本部研究資金戦略課から新たにお迎え致しました。運営・管理にご経験豊富な方が多く、心強い執行部・事務部の体制を組むことができたと感謝致しております。
 
つぎに、部門長の皆様ですが、G0は井元清哉教授、G1は稲田利文教授、G2は山梨教授、G3は石井健教授、G4は長村文孝教授が務められます。執行部を経験された先生を含む経験豊富な方々です。所の運営に対して適切なご助言を賜りたく、お願い申し上げる次第です。
 
さらに、医科研病院につきましては、朴成和病院長の下、南谷副病院長、小粥看護部長、黒田薬剤部長に、昨今の医療をとりまく厳しい環境の下での運営、経営をお願い致します。藤堂前病院長のもとで進められた改革を継続していただくとともに、医科研病院の将来を見据えた議論を深めながら、先見性のある体制構築をお進めいただけるものと確信致しております。
 
さて、もちろん医科研の主役は、教員、研究者、大学院生、技術職員、医療従事者、事務部、URAなど医科研に集うすべての所員の皆様です。皆様がそれぞれのお力を十分に発揮できる環境を整えることが私の役目と任じております。その実現のために、中西前所長からのバトンをしっかりと受け継ぎ、医科研の更なる発展を目指してまいります。ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
 
本日は誠にありがとうございました。

 

東京大学医科学研究所 所長
岩間 厚志