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国立大学法人として初、「再生医療等製品」製造業許可を取得 ――東京大学医科学研究所IMSUT-HLCセルプロセッシング施設――

 
国立大学法人東京大学(本部:東京都文京区、総長:藤井輝夫、以下「東京大学」)は2023年3月20日、国立大学法人として初めて、「再生医療等製品」製造業許可を取得しました。

細胞調製室で「再生医療等製品」を製造する様子

 

国立大学法人東京大学医科学研究所(以下、「東大医科研」)は、医科研1号館地下1階の細胞製造施設『IMSUT-HLCセルプロセッシング施設』(以下、「IMSUT-HLC-CPF」)において、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第23条の22第1項」の規定に基づいた再生医療等製品の製造のための製造所の登録と製造業許可を2023年3月20日付で取得しましたので、お知らせいたします。国立大学法人としては、国内初となります。

IMSUT-HLC-CPFは、ヒューマンライフコード株式会社(代表取締役社長:原田雅充、https://humanlifecord.com/)との共同研究契約のもと2021年に設置され、東大医科研が品質・情報管理室を立ち上げました。今回IMSUT-HLC-CPFにおいて製造される「再生医療等製品」は、他家臍帯由来間葉系細胞(MSC)となります。

「臍帯(さいたい)」とは、お腹の中にいる赤ちゃんとお母さんをつなぐ紐状組織で、「へその緒」として知られています。ただし厳密には「へその緒」は赤ちゃんのへそに残っている臍帯を指し、IMSUT-HLC-CPFは、へその緒の残りの臍帯を用いた細胞治療を目指しています。臍帯由来MSCは、臍帯から調製されたMSCのことで、大量に増やして血のつながっていない他人にも投与できるのが特徴です。他人から提供頂いた組織を「他家」と言います。

「臍帯血」は、この臍帯と胎盤の中に残っている血液のことで、その中の血液をつくり出す造血幹細胞や免疫細胞は、様々な医療に役立つことがわかってきています。また臍帯組織からは、自己複製能があり抗炎症能や組織修復能を発揮するMSCが豊富に得られ、免疫療法や再生医療への応用が期待されています。

IMSUT-HLC-CPFでは、東大医科研臍帯血・臍帯バンク(施設長:長村登紀子准教授)(※1)が、国内の産婦人科にてお母さんの同意を得て収集された臍帯から得られたMSCを用いた治験を含めた開発研究や、GCTP(※2)省令準拠のもと、治療用原材料となる高品質なマスター細胞等を製造・ストック・提供していきます。

本製造業の取得により、臍帯由来MSC製品に関して、原料供給から企業による製造販売承認までの一気通貫のサプライチェーンを構築でき、治療を待っている患者さんに医療として製品をお届けできるようになります。これまでは、アカデミアでの開発から企業へ橋渡しする際に大きな製造・品質試験の環境や規制対応等の点で谷間ができることが多かったのですが、IMSUT-HLC-CPFが製造業を取得することにより技術力を高めて、企業に円滑に細胞を提供し、一刻も早く患者さんのもとに細胞製品が提供できることを期待しています。

なお、本製造業取得は、国立大学としては初めての試みであり、本取得のゴールは、高品質かつ安心・安全な細胞治療を目指すことにあり、その第一歩となる成果が得られたと考えております。引き続き関係各位のご理解・ご協力を賜りながら、慎重に進めて参ります。

〈参考〉
 

※1 東京大学医科学研究所附属病院臍帯血・臍帯バンク(東大医科研臍帯血・臍帯バンク)
http://imsutcord.umin.jp/about.html
東大医科研臍帯血・臍帯バンク(施設長:長村登紀子准教授)は、当附属病院臨床研究支援組織の一つとして2017年4月より設置されました。治療や医学の発展を目指し、臍帯血及び臍帯を集め、それら、及び、そこから得られた細胞等を適切に保管・管理、あるいは製造して、医療機関や利用を希望する国内外の大学その他の研究機関、製薬会社等の企業に一定の条件のもと提供するバイオバンク(※3)です。多くの研究や開発が行われることにより、より多くの疾患に対する治療法の開発、また、疾患の原因解明等を加速させることができると考えています。これまでに造血幹細胞移植後の治療抵抗性重症急性移植片対宿主病の医師主導治験や、COVID-19関連急性呼吸窮迫症候群、脳性麻痺や造血幹細胞移植後の非感染性肺合併症等の企業治験へ臍帯由来MSC製品を提供しています。

※2 GCTP(Good Gene, Cellular and Tissue-based products Manufacturing Practice)
再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令。

※3 バイオバンク
医学研究・開発・医療を加速させるために、ご提供いただいた試料(血液や組織など)や情報(診療情報など)を集めて適切な管理環境で保管、提供する仕組み。

 

【本件に関する問い合わせ先】

〈本リリースの内容に関すること〉
東京大学医科学研究所「IMSUT-HLCセルプロセッシング施設」施設長
附属病院臍帯血・臍帯バンク/幹細胞治療研究センター 体性幹細胞研究分野
長村登紀子 准教授
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/lab/transreclink/section28.html

〈報道に関すること〉
東京大学医科学研究所 国際学術連携室(広報)
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/index.html

PDF版はこちらよりご覧になれます(PDF:433KB)