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バイオバンク・ジャパンのゲノムデータを制限公開 ~オーダーメイド医療の実現に向けたデータ・シェアリングの試み~

令和3年11月30日

バイオバンク・ジャパンでは、新たに取得した第2コホートのうち42,689人の全ゲノムジェノタイピング・データ、及び第1コホートのうち未解析であった11,716人の全ゲノムジェノタイピング・データ を国内の学術研究データベースであるNBDCヒトデータベース に登録し、厳正な審査によって認められた国内外の大学や民間企業などの研究機関に学術研究や公衆衛生の向上の目的で提供するため、制限公開を開始いたしました。

大規模なヒトゲノム解析研究が世界で進んでおり、新たな病態解明や創薬に役立つ研究成果が得られています。しかし、その対象集団が極端に欧米人に偏っていることが指摘されており、現在、多様な集団を対象としたゲノム研究が国際的に求められています。実際に、ゲノム配列の一般的なパターンは集団によって少しずつ異なることが知られており、ゲノムからわかる個人個人の病気になりやすさの違いを解明し、わが国でのオーダーメイド医療を実現するためには日本人集団のゲノムデータ解析が必要です。これまで、バイオバンク・ジャパン等の日本人のゲノムデータを用いた研究は、集団間で医療上役立つゲノム配列パターンの違いを明らかし、世界各地でゲノム研究を行う必要性を実証してきました。また、すでに理化学研究所はバイオバンク・ジャパン第1コホートのうち182,505名の全ゲノムジェノタイピング・データをNBDCヒトデータベースに登録して制限公開しており、厳正な審査によって認められた研究者や企業が利用しています。

今回はさらに我が国での、並びに国際的なヒトゲノム研究に貢献するためのデータ公開を推し進めるため、東京大学医科学研究所が新たに全ゲノムジェノタイピングを行い取得した第1コホートの11,716人分と第2コホート42,689人分のゲノムデータについてNBDCヒトデータベースを介して早期に制限公開いたします 。データ公開によって、学術研究や公衆衛生の向上を目的とする、幅広いさまざまな研究者や企業へのゲノムデータの提供が可能となり、更なる研究の進展が後押しされ、オーダーメイド医療の実現へと近づくことが期待されます。

今回制限公開されるゲノムデータは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)によるゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム研究バイオバンク) 「利活用を目的とした日本疾患バイオバンクの運営・管理」の研究開発費を用いて取得されました(JP20km0605001)。

問い合わせ先:
バイオバンク・ジャパン事務局
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1 東京大学医科学研究所内
電話 : 03-5449-5122 Fax : 03-6409-2060

バイオバンク・ジャパン
バイオバンク・ジャパン(BBJ)は、東京大学医科学研究所に設置されている日本最大の疾患バイオバンクです。本バンクは、文部科学省のリーディングプロジェクトとして2003年に設置され、これまでに約27万人の患者さんの参加協力により 、64万本以上の血液(血清)試料と約27万人分のDNA試料と臨床情報を収集しています。BBJではこれらの試料・情報を保管するとともに、日本のルール(法律やガイドラインなど)に従って多くの研究者に提供しています。またBBJは、研究成果の公開を通じて、国民の健康・福祉に貢献しています。 

本研究プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)によるゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム研究バイオバンク)「利活用を目的とした日本疾患バイオバンクの運営・管理」の支援を受けて実施しています。


ジェノタイピング(遺伝型判定)とは、遺伝情報であるゲノムDNAに個人個人で違いがあるところに絞ってその違いを判定する実験手法を指します。約30億塩基対の長さであるヒトゲノムDNAの中で、無作為に選んだ二人の人の配列が異なる位置はたかだか300~400万箇所にとどまるため、全ゲノムジェノタイピングは効率的に行うことができます。一般的にSNPアレイと呼ばれる技術を用いて実験し、この場合さらに代表的な50万箇所程度の位置の遺伝型情報に絞って判定します。一方、違いがあるかないかに関わらず対象とする領域の全てのDNA配列を実験で決定するのはシークエンス(配列決定)と呼びます。シークエンスを行うと、代表的ではないという理由でSNPアレイでは取得不能なDNA配列も取得することができるという違いがあります。シークエンスを行うには次世代シークエンサーと呼ばれる技術を用いるのが一般的ですが、全ゲノムシークエンスを行う場合は10倍以上のコストがかかるというデメリットがあります。

 NBDCヒトデータベースは、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)と日本DNAデータバンク(DDBJ)が共同運営する、ヒト由来試料からのゲノムデータなどを共有するための公的レポジトリです。個人ごとのゲノムデータやさまざまな表現型情報について、データの提供および利用に関する申請はNBDCヒトデータベースを通じて行われ、登録されるデータはDDBJ内のJGA(Japanese Genotype-phenotype Archive)データベースに格納されています。

ゲノムデータはNBDCヒトデータベースから公開されますが、それと紐づく臨床情報は、試料等利用審査会の審査を経てバイオバンク・ジャパン事務局から提供されます。詳細については本ウェブサイトの関連ページをご覧ください。

 

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