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バイオバンク利活用ハンドブック第3版の発行
~日本全国のバイオバンクの利活用を進めるための、利用者向けの情報とともに運営者側のノウハウも網羅した総合ガイドが完成~

発表のポイント
  • 我が国の主要なバイオバンク※1の利活用を促進するため、利用者視点での情報と運営者側のノウハウを網羅した、バイオバンク利活用ハンドブック第3版が完成しました。
  • インターネットから誰でもダウンロード可能です。
  • このハンドブックは2020年3月発行の初版以来、改訂を重ねたもので、運営者側のノウハウとFAQ(よくある質問)は今回初めて掲載されました。

概要】

東京医科歯科大学 吉田 雅幸教授を中心とした全国のバイオバンク運営に関わる研究者のグループは、バイオバンク利活用ハンドブック第3版を発行し、公開しました。本ハンドブックは、主に、バイオバンク利用者向け、バイオバンク関係者向けの2部から構成され、よくある質問なども加え、バイオバンクに関連する様々な情報が網羅されています。

国内の主要なバイオバンクの協力を得て、本ハンドブックでは、バイオバンクとは何かに始まり、その使い方から運営におけるノウハウや留意点を説明しています。バイオバンクについての知識がなく初めてヒト由来試料・情報を使うことを考えている研究者から、既にバイオバンクの利活用を経験した上で更なる利活用を考えている研究者、またバイオバンクの新規設置や運用の拡大を考えている研究機関等にとっても、役立つ内容となっています。

本ハンドブックの内容を参考にバイオバンクの利活用や運営を進めていただくことで、我が国のバイオバンクの試料・情報の利活用がスムーズかつより効果的に行われることが期待されます。
 
 

【詳細】

〇ハンドブックの制作と背景・目的
制作には、バイオバンクを運用している東京医科歯科大学、東北大学、東京大学、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(国立の6つの医療センターから構成)、岡山大学から分担研究者が関わり、更に神戸大学から倫理・法令面の研究者が加わっています。

本ハンドブックは、初めてバイオバンクを利活用する方々を主たる読者に想定した第1部と、バイオバンクの運営等に関わる関係者を対象とした第2部及びよくある質問をまとめた第3部の3部構成です。本ハンドブックを通じて、バイオバンクの利活用が全国で促進されるとともに、制作や共有を通じたバイオバンク間でのノウハウ・知見の交換が進み手続きや基準の平準化が促進されることも期待され、全体として我が国のバイオバンクとそれをめぐる文化の向上を目指しています。
 
〇ハンドブックの公開
 本ハンドブックは以下のURLよりダウンロードできます。
 https://biobank-search.megabank.tohoku.ac.jp/v2/instruction
 (バイオバンク横断検索ウェブサイト 「利用方法について」)
 なお、同じページから、本ハンドブックを紹介した動画もご視聴いただけます。
 
〇ハンドブックの主な内容
 本ハンドブックは以下のような構成となっています。
 
目次
第1部 バイオバンク利用者向け
 第1章 バイオバンクとは
 第2章 バイオバンクの特徴と多様性
 第3章 品質管理
 第4章 同意説明文書について
 コラム 試料・情報の海外への配布
 第5章 バイオバンク試料・情報の利用手続き
 第6章 分譲審査・試料利用の審査
 第7章 MTA・契約の締結について
 第8章 バイオバンクからの情報公開
 
第2部 バイオバンク関係者向け
 第9章 バイオバンクで用いる同意説明文書例
 第10章 試料品質の情報提供
 第11章 バイオバンクにおける成果発信
 第12章 MTA・契約の締結について
 
第3部 FAQ
 第13章 支援ユニット活動を通じての相談事例と回答
 
巻末資料
 資料1:バイオバンクの同意説明文書に含めるべき内容
 資料2:倫理審査委託に関する研究機関要件確認書
 資料3:推奨MTA雛形モデル
 
〇本ハンドブックの特長
  • 設置母体が多様なバイオバンクの特長や現在の運営情報が網羅できていること
我が国でバイオバンク事業を実施しているプロジェクトや機関は数多くあります。本ハンドブックでは、収集規模の大きな3大バイオバンク2と診療機関併設型バイオバンク3について各々の特長をまとめています。なお、研究目的に合致する試料や情報が、どのバイオバンクに保管されているかについては、ウェブ上の検索システムであるバイオバンク横断検索システムを用いて、調べることができます。
 
  • 実際のバイオバンクの利用プロセスに沿った構成となっていること
バイオバンクの試料・情報を初めて利用する方にも理解しやすいよう、バイオバンク試料・情報の利用手続きに関する標準的な流れと各ステップの概要と意義・目的について説明しています。また、3大バイオバンクを中心に、診療機関併設型バイオバンクとして京都大学、東京医科歯科大学、筑波大学、岡山大学の各施設における実際の手続きを紹介しています。なお、本ハンドブックでは主にMTA(Material  Transfer Agreement)4に基づく分譲・配布の流れや手続きを中心に扱い、共同研究契約に基づいた利用についても一部記載しています。
 
〇第3版で行われた更新
  • 第1部「コラム 試料・情報の海外への配布」を追加
バイオバンク運営時にしばしば課題になる海外への配布について、我が国の現況をコラムとして記載しています。
 
第2部「バイオバンク関係者向け」のセクションを創設
新たにバイオバンク運用側を対象とした記載を充実させました。第2部の第9章ではバイオバンクでの試料・情報の取得の際に用いる広範同意文書の標準的な文書を紹介しており、各バイオバンクでの同意説明文書を作成する際の参考として活用できます。今後バイオバンクの利活用推進の方向性と各バイオバンクの設置目的などに鑑みて、医学研究以外の研究や研究開発に広げる際に参考になります。

第10章では代表的なバイオバンクにおける試料品質管理と今後の方向性について、第11章ではバイオバンクにおける成果発信について、目的・対象・内容について事例も交えて紹介するとともに、利用する側やバイオバンクに試料・情報を提供する側の視点も含めて、我が国の現状を記載しています。本ハンドブックは、提供者をはじめ多くの関係者の協力を得て発展的に構築・運用されていくために、現状のみならず中長期を見据えた課題も挙げており、バイオバンクの成果発信のこれからの在り方を考えていく一助となります。
 
 
  • 第3部「FAQ」を追加
バイオバンク利用者ならびにバイオバンク関係者からよくいただくご質問・お問い合わせに対する倫理・知財支援ユニットの回答を一般化して掲載しています。
 
【今後の展望】
本ハンドブックは、複数のバイオバンクの特徴・手続きを網羅することにより、医学系の大学にとどまらず、理工系の大学や研究機関ならびに企業等の多くの研究者にバイオバンクに貯蔵されている豊富な試料・情報を有効利用していただきたいという願いから作成しています。本ハンドブックを読むことで、バイオバンクの試料・情報を用いた研究の手順を理解し、これまでヒト由来の試料を用いた研究を行っていなかった研究者の方々にも、ヒト由来の試料・情報の利用の将来性をご理解いただき、バイオバンクの試料・情報の利用が一層活発になることを通じて多くの研究成果がもたらされることを期待しています。
 
 

【参考】

<関連サイト>
 

 
 
サイト名:バイオバンク横断検索システム
言語:日本語・英語
URL:http://biobank-network.jp
 
3大バイオバンク 国立がん研究センター;https://www.ncc.go.jp/jp/biobank/
国立循環器病研究センター;http://www.ncvc.go.jp/biobank/
国立精神・神経医療研究センター;https://www.ncnp.go.jp/mgc/bio.html
国立国際医療研究センター;https://biobank.ncgm.go.jp/
国立成育医療研究センター;https://www.ncchd.go.jp/scholar/research/section/bb/
国立長寿医療研究センター;https://www.ncgg.go.jp/mgc/biobank/
 
診療機関併設型バイオバンク  
 
<研究プロジェクトについて>
本ハンドブックは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による平成30年度採択のゲノム医療実現推進プラットフォーム事業ゲノム研究プラットフォーム利活用システムの領域 A 課題 2「倫理的・法的・社会的側面からみたバイオバンク資源利活用促進戦略」研究班(研究開発代表者:東京医科歯科大学 吉田 雅幸教授)の一環として制作されています。
 
 

【用語解説】

※1. バイオバンク
もともと生物資源を研究用に収集、分譲する事業や施設を指し、ヒトに限らず、マウス、ブタ、イネ、細菌等の動植物や微生物を対象としたバイオバンクが設置されている。主として治療目的で収集されている組織バンク(骨髄バンク、アイバンク)も存在する。このような多様なバイオバンクが存在するなかで、本ハンドブックにおいて取り扱う「バイオバンク」は、将来の医学研究のために利用することを目的に患者さんや一般の方々から提供いただいた血液、手術・検査試料の一部と診療情報のこと。
 
※2. 3大バイオバンク
代表的なバイオバンクとして、東京大学医科学研究所に設立されたバイオバンク・ジャパンでは、文部科学省「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」として2003年から試料の収集が開始され、20万人以上の患者さんの試料が収集されている。また全国6か所の国立高度専門医療研究センターが連携して設立されたナショナルセンター・バイオバンクネットワークでは、がん、心疾患、神経疾患、小児疾患、認知症などの各センターの特色を生かした試料・情報の収集が行われている。さらに、我が国における一般住民を対象としたバイオバンクでは、東北メディカル・メガバンク計画が、宮城・岩手両県の住民から15万人以上の試料・情報を収集している。うち7万人超が三世代コホート調査と呼ばれる、家系情報付き出生コホートに由来するものという特徴がある。
 
※3.  診療機関併設型バイオバンク
大学等において、比較的少数の質が高く多様な検体を必要とする研究に対応するため、診療施設に併設したバイオバンクのこと。我が国では近年のゲノム医療研究の活性化に伴い、診療機関に併設したバイオバンクを独自に整備する動きが広がっている。
 
※4. MTA(Material Transfer Agreement)
研究成果有体物を提供し使用を許容する契約書。提供者の知的財産を保護しつつ、研究成果有体物の適切な活用を促進することを目的とし、権利関係に関する条件(研究成果有体物の帰属等)や、取扱いに関する条件(利用範囲、免責、法令遵守等)が規定されている。
 
 

【お問い合わせ先】

(研究に関すること)
東京医科歯科大学生命倫理研究センター
教授 吉田 雅幸(よしだ まさゆき)
https://tmdu-berc.jp/
 
(報道に関すること)
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
https://www.tmd.ac.jp/
 
(AMED事業に関すること)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
ゲノム・データ基盤事業部
ゲノム医療基盤研究開発課
https://www.amed.go.jp/
 

PDF版はこちらよりご覧になれます (PDF:319KB)