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バイオバンク横断検索システム第2版の公開
~85万検体の試料品質管理情報、高度化にあたっての 提供者の同意に関する情報を一括で検索可能に~


発表のポイント
  • わが国の主要なバイオバン(※1)の保有する試料・情報を一括で検索するバイオバンク横断検索システムをバージョンアップし、新たな検索項目として、産業界のニーズの高い試料品質管理情報・同意情報の項目を追加した第2版を公開した。
  • データベースやAPI(※2)の実装設計・開発による大幅なアップグレードで、今後の各バイオバンクの発展・変化に柔軟に対応して検索項目を追加可能なシステムに更新した。

概要】

日本で主要なバイオバンクを運用する7機関は共同で、全国のバイオバンクの保有する試料・情報を一括で検索するバイオバンク横断検索システムをバージョンアップし、バイオバンク横断検索システム第2版を公開しました。

産業界やアカデミアの要望を受けて、試料品質管理情報・同意情報の項目を新たに追加しています。本開発により、バイオバンクの利用者は、民間企業による研究開発利用が可能かどうかや、バイオバンク・ネットワークが保有する総計約42万人から提供された約85万検体の試料、約20万件の解析情報を、試料の品質を確認しながら横断的に検索することが可能となりました。

なお、品質管理の項目および同意に関する項目はそれぞれ国際的な標準に準拠しました。本研究開発により、ゲノム医療の研究開発に必要な試料・情報へのアクセスが大きく加速することが期待されます。
本開発は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による支援を受けて行われています。
 

【詳細】

<今回のアップグレードで追加された情報>
・試料品質管理情報
検索対象に追加した試料の品質管理に関する項目は以下の通りです。各項目についてはSPREC (Standard PREanalytical Code), BRISQ (Biospecimen Reporting for Improved Study Quality), CAP-Pre-Analytical Variables(※3)の各標準に準拠しました。


・同意情報
検索対象に追加した同意に関する項目は以下の通りです。各項目については国際的な標準であるGA4GH (Global Alliance for Genomics & Health)(※4)が策定したDUO  (Data Use Ontology)(※5)に準拠しました。

なお、これらの項目の追加は、本開発の過程で特に、日本製薬工業協会や日本臨床検査薬協会の加盟企業に協力を求めた調査等から特に要望が高かったものとして行われました。
 
<今回のアップグレードに合わせて行われた更新>
バイオバンク試料・情報の利活用のための情報の充実
バイオバンクリソースの利活用を促進するため、その利用方法をガイドしたバイオバンク利活用ハンドブックも、新たにバイオバンク運用側を対象とした記載を充実させた第2版が発行され、バイオバンク横断検索システムのウェブサイトからダウンロードできるようになっています。

本ハンドブックは、本横断検索システムを開発したAMED ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業ゲノム研究プラットフォーム利活用システムの領域 A 課題 2「倫理的・法的・社会的側面からみたバイオバンク資源利活用促進戦略」(研究開発代表者:東京医科歯科大学 吉田 雅幸教授)により制作されています。
 
ウェブサイトの更新
バイオバンク横断検索システムをより使いやすくご利用いただけるように、デザインや構成を改善しました。全てのページで英語・日本語のコンテンツを用意し、ボタン表示で切り替えられるようにしました。またデータの更新日を表示し、今後は様々な情報をウェブサイトのお知らせを主軸に発信していきます。
 
<これまでの経緯>
本研究開発は平成 27~28 年度に AMED ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業で実施された研究開発「バイオバンク横断型の試料・情報検索システムの基盤構築とプロトタイプ開発」の成果を活用し、平成 30 年度より同事業のゲノム研究プラットフォーム利活用システムの領域A課題 1 として開始しました。
 
バイオバンク横断検索システムは、「バイオバンク横断型の試料・情報検索システムの基盤構築とプロトタイプ開発」の研究開発課題のプロトタイプ開発を受けて、東北大学東北メディカル・メガバンク機構によって開発・運用されてきた統合データベース dbTMM をベー スとして初版が開発され、令和元年 10 月 28 日に発表されました。(【参考】を参照)
 
バイオバンク横断検索システムは、下記のバイオバンクが保有する試料・情報に 関する分散データベースを横断して検索することができます。
 
検索対象のバイオバンク (コード名)
(1)3大バイオバンク
①東京大学医科学研究所バイオバンク・ジャパン(BBJ)
②東北メディカル・メガバンク計画(TMM) 
③ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(6NC)
(2)診療機関併設型バイオバンク
①京都大学医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンター(KUB)
②東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンター(TMD)
③筑波大学附属病院つくばヒト組織バイオバンクセンター(THB)
④岡山大学病院バイオバンク(OBB)
 
上述のうち、(2)の①~③は、AMED ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業ゲノム研究プラットフォーム利活用システムの領域 Bから参画しています。(「診療機関併設バイオバンクのネットワーク参画」(研究開発代表者:京都大学 武藤 学教授)、「東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンターのネットワーク参画」(研究開発代表者:東京医科歯科大学 稲澤 譲治教授)、 「臨床研究活性化を目的とした研究支援型バイオバンクの構築」(研究開発代表者:筑波大学 西山 博之教授))前述の領域A課題2のハンドブック等の掲載と合わせ、本研究開発課題では、複数の課題間の協力・連携を強化して取り組んでいます。

なお各バイオバンクの詳細は、初版発表時のプレスリリース資料(【参考】を参照)及び、各バイオバンクのウェブサイト等をご参照下さい。
 

【今後の展開】

バイオバンク横断検索システムは、対象となるバイオバンクが試料・情報の収集・保管を拡大していくのに合わせて、検索対象も順次拡大しています。今後も更なる拡大を続け、我が国におけるヒト試料・情報の利活用の効率的な推進の基盤としての役割を果たしていきます。

また、新規の機能として、コーディネート機能の実現とマッチング支援を検討しています。特に、アカデミアや企業の研究者がバイオバンク横断検索システムを利用して必要な試料を希望する際に、ニーズに最も適合した試料・情報の迅速な入手をコーディネートするウェブ申請システムの設計を検討し、マッチング支援を実装していくことを計画しています。

こうした拡充や機能充実を通じて、ゲノム医療研究開発や創薬開発に必要となる多様な試料や情報が効率よく利活用されるために、わが国のさまざまな特徴あるバイオバンクのネットワーク形成と、横断的な試料の利活用、データシェアリングを促進し、ゲノム医療に必須の社会インフラとしてのバイオバンク・ネットワークへ継続的な成長に寄与していきます。
 
【AMEDゲノム医療実現推進プラットフォーム事業バイオバンク横断検索システム】
サイト名:AMEDゲノム医療実現推進プラットフォーム事業バイオバンク横断検索システム
言語:英語 ・日本語
 
【参考】
<バイオバンク横断検索システム 初版プレスリリース>
バイオバンク横断検索システムの運用開始~国内のバイオバンク7機関で保有する65万検体の試料・20万件の情報が一括で検索可能に~
 
<研究プロジェクトについて>
バイオバンク横断検索システムは、AMEDのゲノム医療実現推進プラットフォーム事業(ゲノム研究プラットフォーム利活用システム)の研究開発事業の一環として、ゲノム医療実現推進に向けたバイオバンク・ネットワークを構築して、バイオバンクの利活用を促進することを目指しています。
 
 

【用語解説】

(※1) バイオバンク
生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う仕組み。横断検索システムでは上記6バイオバンク機関と1バイオバンクネットワークの試料・情報を検索することが可能。

(※2) API
Application Programming Interfaceの略。あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと。

(※3) SPREC、BRISQ、CAP Pre-Analytical Variables
・SPREC (Standard PREanalytical Code)は、検体処理工程について共通のコードにしたもの。
・BRISQ (Biospecimen Reporting for Improved Study Quality)は、生体試料を用いた研究報告の質を高めるための枠組み。
・CAP Pre-Analytical Variablesは、CAP(米国病理学会:College of American Pathologists)のDiagnostic Intelligence and Health Information Technology Committee sponsored a Biorepository Working Groupによって提案された、検体の品質に影響を及ぼす検体処理工程の要因の一覧。

(※4) GA4GH (Global Alliance for Genomics & Health)
国際標準の倫理的な配慮の下、各国間でゲノムデータを共有することによりゲノム情報を用いた医療や医学の発展を目指す国際協力組織。

(※5) DUO (Data Use Ontology)
データ共有のための技術標準の一つ。GA4GHの活動の一つであるData Use & Researcher Identities(DURI)Work Streamにて開発された。

 

【お問い合わせ先】

(研究に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
教授 荻島 創一(おぎしま そういち)
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/

(報道に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神 風二(ながみ ふうじ)
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/

(AMED事業に関すること)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
ゲノムデータ基盤事業部
ゲノム医療基盤研究開発課
https://www.amed.go.jp/
 

PDF版はこちらよりご覧になれます (PDF:374KB)