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平成23年 年頭の挨拶

平成23年 年頭の挨拶

2011年01月04日

 明けましておめでとうございます。
 新年を迎えるにあたり、一言ご挨拶をさせていただきます。
 私が年頭のご挨拶をさせていただくのはこれで4回目になります。今年の3月で2年2期の任期を終え、4月からの新所長に清野宏教授が選出されました。清野先生にはこの4年間経理系担当の副所長として医科研の運営には大変ご尽力いただきました。特に、平成16年から始まった継続的な大学予算の削減、それに対応するための新しい組織運営システムの構築、そして医科研にとっての節目となる2012年の120周年記念事業の準備では中心的な役割を果たしていただきました。また120周年の年には、教授層の大々的な世代交代が始まります。その時に向けて、新しい時代のリーダー的人材を医科研に集める必要があります。総務系副所長の井上純一郎教授には、人事刷新を軸としながら、新しい世代による研究の活気を研究所全体に波及させ、且つ、研究成果の社会還元を加速するための組織改革を進めてもらっています。こういった研究所改革の流れを、着実な成果へと結びつけるプランを4月からは清野新所長に実行していただけると思います。

 付属病院では、昨年5月に赴任していただきました今井浩三病院長に、ますます大事な時期を迎えようとしている医科研病院のかじ取りを引き続きお願いすることになります。病院スタッフの活力を引き出し、病院ベッドの稼働率向上につなげるというところでは、早速、目に見える成果を出していただいているところです。さらには、トランスレーショナル・リサーチを行う拠点病院としての機能整備も進めていただいています。また、市民公開医療懇談会の開催などを通して開かれた研究所病院作りが進んでいます。

 事務部では、これまでの3年間、事務組織を率いて医科研の運営を支えていただきました今泉部長が、ご都合により、昨年末でご退職されました。残念なことでしたが、これまでのご尽力に大変感謝いたしますとともに、セカンドライフもゆったりと楽しんでいただきたいと思っています。当面は松井総務課長に事務部長事務代行を務めてもらいますが、4月には新部長が着任されることになります。

 技術系職員の組織化もゆっくりではありますが、着実に進んでいます。医科研はさまざまな専門領域での技能を持った優秀な技術職員を要しているという点で大変に恵まれています。それぞれの能力を生かして、研究および教育の支援活動が技術室を中心にして進められています。今後一層この方向での充実が図られると考えています。

 これらの医科研の活動を支えるためには財源が必要です。昨年の年頭の挨拶を思いだしてみますと、新政権が誕生し、予算削減の手法として事業仕分けが行われたことや大学の予算に関して不透明感が増していることをお話ししました。この状況は基本的には今年も変わっていません。平成23年度の政府予算案は昨年末12月24日にやっと閣議決定されました。一時期は、大学運営費交付金は10%削減になると言われていましたが、最終的には文科省予算レベルでは0.5%減というところで落ち着いてくれました。これが医科研の予算に反映されるときにはどのくらいの削減に相当するのかはもう少し待つ必要があります。この削減率ですぐさま経営に激震が走る様な事態にはなりませんが、国家予算の組み立てを見ると全体予算額が税収を大きく上回る状態なので、継続性が見込める計画ではないことがわかります。したがって、平成24年度にも同じ心配をする必要がある状態が続きますので、引き続き節約と経営効率の改善に努める必要があります。

 こういった状況においても、医科研は特別教育研究経費等の文科省予算の獲得で健闘しています。次年度予算では、粘膜ワクチン戦略的開発推進事業に5年間の予算が決まりましたし、病院強化の予算も増額されました。今回、東京大学全体で7件しか採択されませんでしたが、医科研はその一つを獲得できたことになります。振り返ってみますと、私が記憶する過去4年間、連続して特別教育研究経費が獲得できていることは大変な成果であり、医科研所員一同の精進の賜物です。これらは、システム疾患モデル研究センター改組事業、幹細胞治療研究センター設立事業、共同利用・共同研究拠点事業、それに今回の粘膜ワクチンが続きます。他にも、研究所としてはGCOEや若手研究者の組織的派遣事業費を獲得し、アジア感染症拠点事業、感染症国際研究センター事業、若手自立促進事業を継続させることが出来ました。運営費交付金の削減がある中で、これら予算の獲得の面では非常に健闘できたと思います。それでも研究所の運営費交付金部分では財政的に厳しい状況が続いていますので、これらの獲得資金の配分も含めてトータルに経営を考える必要性に直面しています。このような経営面での改革も、確実に進めて行きたいと考えています。

 アカデミックな面では、大学法人化後の中期計画が終了するに当たって、医科学研究所は期待されるレベルを上回る研究成果を修めたという評価をいただきました。これも所員一同がそれぞれの持ち場で、しっかりとした成果を挙げた賜物だと考えます。ノーベル賞受賞者が医科研からまだ出ていないのは残念ですが、昨年は日本人として、クロスカップリングという化学合成法の開発で北大の鈴木章先生とパデユー大の根岸英一先生が受賞されました。1年おいて再び日本人が受賞したということで大変我々の励みになりました。鈴木先生もパデユー大学に留学されたことがあるそうで、お二人ともそこの教授で1979年にノーベル賞を受賞されたハーバート・ブラウン教授のお弟子さんに当たるそうです。根岸先生は日本の若い人たちが海外に興味を失い、冒険心を失っていることを大変心配されています。私も同様に感じますが、単純には割り切れない、社会全体に関係した根深い問題があるように思います。しかし、医科研の大学院生や若手研究者は大変恵まれています。大学院生およびポストドクにはGCOEによる海外での学会参加が支援されていますし、若手教員に対しては組織的派遣事業によって短期から2カ月以上の比較的長期の派遣が可能になっています。まだまだ予算的な余裕がありますので大いに活用していただきたいと思います。

 さて、所長の任期もいよいよ3カ月となりました。しかし、ここで気を抜くことなく、ますます発展する医科研への道筋をはっきりとさせながら、清野先生にバトンを渡す体制に入りたいと思います。最後になりましたが、今年も皆様が健康に過ごされ、それぞれの夢を実現されることを祈念して、年頭の挨拶とさせていただきます。