新規ゲノム編集技術
CRISPR-Cas3の開発


ゲノム編集技術は、農業、産業、医療などのさまざまな分野に利用されていますが、オフターゲット変異といった安全性や、知的財産等の課題があります。 これら課題を克服するため、当研究室では日本初の新しいゲノム編集技術『CRISPR-Cas3』を開発しました。 現在、CRISPR-Cas3を利用して以下の研究を行っています。

1.ヒト細胞、iPS細胞、免疫T細胞などで効率的なゲノム編集を行い、がん、神経疾患、皮膚疾患などに対する新しい細胞療法の開発。
2.AAVなどウイルスベクター、リポソーム系ドラッグデリバリー技術を用いて体内にCRISPR-Cas3を導入するin vivo遺伝子治療法の開発。
3.CRISPR-Cas3ライブラリーを用いたがん遺伝子、遺伝子発現調節領域、エピゲノム領域等の同定を行い、新しい遺伝子治療候補の探索。
4.マウス・ラット受精卵におけるゲノム編集技術の開発、ヒト疾患モデルの作製。

ゲノムおよび細胞による
ヒト化動物の創成


1.ヒト化動物(ゲノム)は、ゲノム編集技術を使って、動物の遺伝子やゲノム領域を切り取り(ノックアウト)、ヒトゲノム遺伝子を貼り付ける(ノックイン)ことで、 ヒト遺伝子群(ゲノム)を保有した動物のことです。ヒト、マウス、ラットは約2万の遺伝子を持っているといわれていますが、ヒトにしか存在しない遺伝子や、 ヒトと動物で機能が異なる遺伝子があることがわかっています。特に、肝臓の薬物や毒物の代謝に関わる遺伝子(p450)、主要組織適合遺伝子(MHC)などの 免疫に関わる遺伝子、知能や脳発達に関わる遺伝子など、重要な機能を持った遺伝子をヒト化することで、新しい動物モデルの創成につながることが期待されます。

2.ヒト化動物(臓器)は、拒絶反応の弱い免疫不全動物にヒトの細胞や組織を移植することで、移植されたヒト細胞や組織が、動物の体の中に生着、増殖した動物のことです。 ヒトとマウス、ラットなどの動物では、肝臓、膵臓、心臓などの薬物代謝、あるいは神経、血液など細胞反応が異なることがわかっています。 これら細胞や組織をヒト化することで、ヒト代謝や生体反応を動物体内で解析することができます。①ヒト化動物(ゲノム)と異なり、組織や細胞を丸ごと変えることで、 個体レベルでヒトの代謝パスウェイを見ることができるメリットがあります。ヒト細胞と動物細胞の両方を保有したキメラ動物を作ることができます。