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退職教員記念講演会ショートレポート

退職教員記念講演会ショートレポート
 

2021年2~3月、長年にわたり医科研でご活躍された4名の諸先輩方の退職教員記念講演会が開かれました。その様子をご報告します。
※肩書は2021年3月時点。
 

退職教員記念講演会は、新型コロナウイルスの影響により1号館講堂で人数を制限して実施され、同時にオンラインにて配信されました。多くの教職員や学生が参加し、教授陣の多大な業績を振り返るとともに長年のご指導に感謝の意を表しました。
 
21年間にわたり医科研の発展に寄与されたウイルス感染分野の河岡義裕教授からは「ウイルス感染症の征圧を目指して Towards Saving the World from Viral Infections」と題した講演がありました。ロベルト・コッホ賞を受賞した1999年のウイルスの人工合成法「リバース・ジェネティクス法」の開発経緯や、西アフリカ・シエラレオネで実施したエボラウイルスの宿主応答解析、新型コロナウイルスのワクチン開発などが披露されました。
 
DNA情報解析分野の宮野悟教授からは「Beyond human genome project」と題した講演が行われ、1996年から24年間にわたり国内外のゲノム研究を率いてきた歩みが紹介されました。2003年にヒトゲノムの解読が終了して以降、予算削減を求める世論が大きくなるなかで新しいゲノム研究の在り方を模索し続けたという宮野教授。2010年には医科研のスーパーコンピュータ「SHIROKANE」を用いた新学術領域「システムがん」を創設したことや、近年進めてきた次世代シークエンサーを用いた大規模ゲノムシークエンス研究などを振り返りました。
 
分子療法分野教授(医科研病院病院長)の東條有伸教授は、30年以上にわたり血液内科医として医科研と医科研病院で活躍されました。「血液内科学の30年~バイオテクからプレシジョンメディスンの時代へ」と題した講演では、抗がん剤、放射線、細胞移植というスタンダード治療を超え、「なるべく正常細胞にダメージを与えずに腫瘍細胞をターゲットする」ことを目指して分子標的薬など新たな血液がん治療のモダリティ開拓に取り組んできた経緯が紹介されました。
 
抗体・ワクチンセンターの田中廣壽教授からは、「骨格筋:未開拓の医療資源」と題した講演が行われました。1999年に医科研病院で関節リウマチ・膠原病患者の診療と研究をスタートさせた田中教授は、ステロイドの作用・副作用の分子機構解明から橋渡し研究に至るまで、常に臨床と基礎を行き来した研究に取り組んできました。患者会などを通して問題意識を深め、ステロイドによる筋萎縮の分子機構解明にも尽力した田中教授は「僕のようなアウトサイダーを受け入れてくれた医科研の懐の深さに感謝したい」と感想を述べました。

2020年度ご退職:ウイルス感染分野 河岡 義裕 教授(現:東京大学・特任教授)

2019年度ご退職:DNA情報解析分野 宮野 悟 教授(現:東京医科歯科大学・特任教授)

2020年度ご退職:分子療法分野 東條 有伸 教授(現:東京医科歯科大学・副理事/副学長)

2020年度ご退職:抗体・ワクチンセンター 田中 廣壽 教授(現:慶應義塾大学医学部・特別招聘教授)