メッセージ

教授 川口 寧

教授 川口 寧

趣味

お酒を飲むこと、海外ドラマ鑑賞
スポーツ全般(特にスキー、野球)

私達の研究対象であり、さまざまな感染症を引き起こすウイルスは、DNAまたはRNAのいずれかを遺伝子として持ち、そのまわりをタンパク質の外殻が囲んでいる極めて小さく、かつ、単純な構造をもつ粒子です。この小さく単純なウイルスがヒトや動物に感染すると複雑な病気を引き起こします。そして、これらの病気の制圧は困難な場合が多いのが現状です。その一方で、これらの病原性ウイルスを人工的に調教することによって、癌や難治性神経疾患の治療に利用するといった試みも盛んに行われています。このように、ウイルスは非常に魅力的な研究対象なのです。

私達の研究室では、「ウイルス研究で新しいサイエンスを切り拓く!」という研究理念に基づき、主に3つのプロジェクトを推進しています。

1つめは、伝統的なウイルス学といえるプロジェクトです。「ウイルスがどのように増殖するか?」「どのように宿主に病気を引き起こすか?」といったウイルス学の根幹をなす命題に迫るべく、戦略的な最先端基礎研究を推進しています。そして、基礎研究で得られた独自の知見を基に、ウイルスの制圧に直結する新しいワクチンや抗ウイルス剤の開発に繋げる橋渡し研究を行っています。

2つめは、ウイルスを生体プローブとして活用することで、一般的な生物研究では解明しえない細胞・生理制御機構を紐解くプロジェクトです。歴史的に、スプライシング、癌遺伝子、mRNAのキャップ構造、細胞融合など、ウイルス研究から発見された重要な細胞機構は数多くあります。宿主細胞無しでは生存できないウイルスは、通常は眠っている細胞機構や一般の生物研究では見つけにくい細胞機構を活性化させて利用(ハイジャック)します。私達は、ウイルスと宿主細胞の相互作用を精緻に解析することによって、一般の生物研究では見過ごされてしまう未知な細胞機構を解き明かす研究を推進しています。このように、ウイルス学の枠組みに捕らわれず、一般の生物研究にも一石を投じるような研究も展開しています。

3つめは、次世代ウイルス学といえるプロジェクトです。私達が主に研究対象としている単純ヘルペスウイルスは、ヒトに多様な病態を引き起こし、全世界で数多の人々が罹患する医学上極めて重要なウイルスです。一方、ヘルペスウイルスは宿主に潜伏感染と回帰発症(再発)を長い間繰り返します。実は、宿主の一生において、ヘルペスウイルスが病気を引き起こす期間は極めて短く、大部分の期間は病気を引き起こさない潜伏感染として宿主と共存します。興味深いことに、ヘルペスウイルスの潜伏感染が、宿主の細菌感染や癌に対する抵抗性などを制御していることが近年明らかになってきました。つまり、ヘルペスウイルスは宿主に病気を起こすという負の因子であるだけでなく、宿主の生命活動に寄与する正の因子であるという新しい概念が生まれつつあります。私達は、ウイルスを生体恒常性因子として捉え直し、その意義を解明するという次世代ウイルス学にも挑戦しています。

これらの研究を通じて、未来のサイエンスを担う若い研究員や学生諸君を育成・輩出することが私達の研究室の最終的目標です。最先端のウイルス研究に私達と共に参加してみませんか? やる気とウイルスに興味がある方なら、ウイルス学や生物学のバックグランドが無くても問題ありません、研究室のスタッフが懇切丁寧に指導します。私達の研究に興味がある方は、是非、研究室を訪れてみてください。

略歴

1986年3月
私立 開成高校卒業
1992年3月
東京大学 農学部 獣医学科卒業
1995年3月
東京大学 農学生命科学研究科 獣医学専攻(見上 彪研究室) 博士課程修了、博士(獣医学)取得
1995年6月
シカゴ大学(Bernard Roizman研究室) 博士研究員
1997年10月
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 助手、同 講師 (1999年4月)、同 助教授 (2000年4月)
2002年11月
名古屋大学大学院 医学系研究科 ウイルス学分野 助教授
2002年11月
科学技術振興機構 さきがけ研究「生体と制御」領域 研究者(兼任) (〜2006年3月)
2005年7月
東京大学 医科学研究所 感染症国際研究センター ウイルス学分野 准教授
2011年11月
東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野 教授
2012年1月
東京大学 医科学研究所 感染症国際研究センター 感染制御系 教授(兼任)
2013年4月
東京大学 総長補佐 (〜2014年3月)
2015年4月
東京大学 医科学研究所 副所長 (〜2019年3月)
2015年4月
東京大学 医科学研究所 アジア感染症研究拠点 拠点長/教授 (兼任)
2021年4月
東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 部門長 (〜2023年3月)
2021年4月
東京大学 医科学研究所 感染症国際研究センター センター長
2022年10月
東京大学 国際高等研究所新世代感染症センター 副機構長
2023年4月
東京大学 医科学研究所 副所長
  • 日本ウイルス学会 常務理事 (2020年1月〜2023年12月)
  • 日本ウイルス学会 ウイルス学将来構想委員長 (2010年4月〜2019年12月)
  • Co-Chair, The 39th International Herpes virus Workshop (July 19-23, 2014)
  • 第62回日本ウイルス学会学術集会 プログラム委員長 (2014年11月10日〜12日 )
  • Chair, The 14th Awaji International forum on Infection and Immunity (September 8-11, 2015 )
  • A member of Editorial Board for Virus Research (2005年1月〜2022年)
  • Associate Editor for Microbiology and Immunology (2007年1月〜2011年6月)

受賞歴

2021年9月
野口英世記念医学賞
2018年10月
小島三郎記念文化賞
2016年3月
テルモ財団賞
2001年11月
日本ウイルス学会杉浦奨励賞
1994年9月
日本獣医学会獣医学奨励賞

寄稿 等

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