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平成24年度から始まる新しいプロジェクト


(1)癌の免疫療法

 近年の抗癌剤の進歩は著しいものがあります。しかし、大腸癌などの固形癌では
残念ながらまだ「完治」は難しいのが現状です。手術で切除出来なければ一時的に
縮小は叶えられても、治癒には至りません。
 近年、免疫学の進歩により免疫担当細胞が抗原を認識するメカニズムが明らかに
されてきました。これを利用して癌だけに存在し、正常組織には発現しないタンパクの
一部(ペプチド)を用いて癌に対する免疫系を活性化するものです。活性化された免疫
細胞が体の隅々まで入り込み、癌細胞を一網打尽にすることが期待されます。

 当院の抗体・ワクチンセンターとの共同研究です。

(2)癌のウイルス療法

 正常細胞では増殖せず癌だけで増殖するように遺伝子を改変したウイルスを用いて
癌だけを破壊する治療を始めます。
 これは他の臓器で既にヒトへの応用が始まっているウイルスを使用します。基礎実験
で有効性が証明されればすぐにでも臨床試験が開始できます。なお、このウイルスに極
めて近い構造を持つ別のウイルスでは大腸癌に対して有効でした。他の癌にも有効性が
期待されます。



平成24年度以前から開始されているプロジェクト


(1)回腸嚢炎の病態解明
 潰瘍性大腸炎の典型的な手術法は「回腸嚢」という袋を作り、肛門またはその近くと
結びつけます。回腸嚢は次第に大腸のように水分の吸収が良くなり排便回数も減少します。
ところが時々、回腸嚢には大腸に生じていた炎症に似た炎症が生じ、下痢や出血などを
引き起こします。
 回腸嚢炎の原因ははっきりしていません。抗生物質が良く効くことから腸内細菌が
何らかの関係を持っているのではないかと推測されますが、現在のところ定説とまでは
言えません。私たちは回腸嚢での遺伝子の働きに着目し、その異常が回腸嚢炎を
引き起こすのではないかとの仮説を立てています。これが事実かどうか実証するため
内視鏡で回腸嚢から生検を行い、調べています。

(2)家族性大腸癌をおこす遺伝子の研究
 ほとんどの病気は生まれもった体質と生まれてからの環境の両方に影響をうけて
発病します。大腸癌の一部は生まれもった体質で発癌することが分かっており、
そのうちポリープが多発(通常100個以上)するものは23対あるヒトの染色体の
5番目に大きい染色体の一部に異常があることが知られています。
 しかし、体質から生じる大腸癌はこれだけではなく、ポリープはそれほど多くはない
けれど癌が出来てしまうタイプがあることも分かってきました。そのような癌の多くは
血のつながった家族に複数の癌患者がいる、いわゆる癌家系のタイプです。
判断基準はやや複雑なのでここでは述べませんが、癌家系とくに50歳以前で発症した
大腸癌を含む家系の方は有力な候補になります。「遺伝子検査」という特殊な検査を
するため説明やカウンセリングが必要になりますので、もし心当たりのある方は
一度、篠崎の外来を受診されるようお勧めします。

(3)炎症性腸疾患の遺伝子解析
 炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。炎症性腸疾患も他の
病気と同様に体質と環境の両面から発病に至ると考えられていて、今までにも病気に
関係する遺伝子が発見されてきました。しかし、病気としては同じなのに欧米で確認
された遺伝子は日本など東アジアでは病気と関連が認められなかったりして、我が国
独自で研究を進めなくてはならないことも分かってきました。体質的な要因は基本的に
遺伝子に情報がのっているはずですので、特に親子や兄弟など家族の中で発病した
ひと(場合によっては発病しない方も含めて)を調べると、比較的容易に原因遺伝子を
見つけることが可能になります。これもカウンセリング等が必要になりますので
ご協力をいただける患者さんは篠崎の外来まで受診をお願いいたします。

(4)クローン病と小腸癌・大腸癌
 以前、クローン病では大腸癌の頻度は病気のない人とあまり変わらないのではないかと
考えられていました。しかし、クローン病の患者数が増えてくると、大腸癌の合併も増加
してくるようになり、潰瘍性大腸炎と同じくらい大腸癌を起こしやすいことが分かってきました。
 小腸癌はもともと、あまり頻度の高い癌ではありませんが、以前よりクローン病で癌患者が
多いことは知られていました。
 小腸癌・大腸癌ともに日本ではまだ症例数も多くなく、肝心の予防や早期発見の方法が
確立されていません。したがって、まず実態を明らかにしてそれを基に予防・早期発見を
考えていきます。私たちは全国の病院にお願いしてこのような症例の詳しい実態を調査
しています。

(5)クローン病と環境因子
厚生労働省の研究班との共同研究で、クローン病発病に関係する環境因子を明らかに
するためアンケート調査を行っております。今回は、発病後間もない(6か月以内)方が対象です。
ご協力を希望される方は篠崎の外来までお願いいたします。


計画中のプロジェクト

再生医療
癌遺伝子の解明
炎症性腸疾患における細菌の関与
炎症性腸疾患からの発癌


などのテーマが用意できます。