当研究室では、血球減少を示す患者さんの中から、精密検査が必要な症例をより簡便かつ客観的に選別するスクリーニング法の確立を目指しています。特に骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞の遺伝子異常を背景に発症し、血球減少や造血細胞の形態異常をきたす造血器腫瘍です。確定診断には骨髄検査や専門的な形態評価が必要ですが、特に低リスク例では診断に至りにくく、患者さんの負担や医療資源の面でも課題が残されています。
本研究で用いるゴーストサイトメトリーは、単一細胞から得られる複雑な波形情報をAIで解析することを可能とした先端計測技術です。蛍光標識や既知の分子マーカーだけに依存せず、単一細胞の微細な形態情報を高速かつラベルフリーに取得できるため、従来の目視では分類しにくい細胞集団の違いをデータとして捉えられる可能性があります。
現在、末梢血検体から得られる多数の細胞形態シグナルをもとに、MDSをはじめとする造血器腫瘍の有無や疾患特性を予測するAIモデルの開発を進めています。初期検討では、MDS患者と健常者の末梢血を用いた解析で疾患を識別できる可能性が示されており、今後は再生不良性貧血など他の血球減少疾患を含めた検証、遺伝子変異や既存の形態診断との対応関係の解析を進めます。将来的には、不要な侵襲的検査を減らし、治療が必要な患者さんを早期に専門医療へつなげる次世代の血液診断技術として発展させることを目指します。