私たちは2015年より、全エクソーム解析(WES)および全ゲノム解析(WGS)を用いたクリニカルシークエンス研究を進めています。ヒトゲノム解析センターとの連携のもと、診断困難な血液疾患の病因をゲノムレベルで探索し、診断、治療選択、予後予測へ還元するとともに、研究から生まれた技術を臨床検査として社会実装することを目指しています。
1. 全ゲノム解析による診断と疾患概念の構築
難治例や非典型例にWGS/WESを適用し、必要に応じて複数組織を用いた体細胞モザイク解析も行っています。これまでに、新規WAS変異を伴うX連鎖性好中球減少症の診断、TP53病的変異の体細胞モザイクの同定、Myeloid/NK cell precursor acute leukemiaの疾患概念の提唱などにつなげてきました。
2. ctDNAを用いた微小残存病変モニタリング
クリニカルシークエンスで同定した患者固有の体細胞変異を腫瘍のバーコードとして利用し、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)による微小残存病変(MRD)モニタリングを開発しています。造血細胞移植後のctDNA-MRDが再発予測に有用であることを示し、多施設前向き研究(UMIN試験登録)へ発展させています。
3. 意義不明変異(VUS)の機能的検証
既報のない変異や構造異常は、意義不明変異のままでは臨床判断に利用できません。そこで、細胞株やマウスモデルを用いて、候補異常が細胞増殖、シグナル伝達、造腫瘍性、薬剤感受性に与える影響を検証しています。新規融合遺伝子RABEP1::FLT3や、有毛細胞白血病で同定した新規構造異常について、病態モデルを用いた解析を進めています。
4. 解析基盤の構築と社会実装
ゲノム解析結果を臨床で利用可能な検査へ発展させるため、解釈支援、解析標準化、薬事・制度対応を並行して進めています。解釈支援パイプラインYokomonの開発(日本特許第7352904号、欧州特許EP4043542)や、ctDNA-MRD検査MyRD®の臨床開発(医師主導Feasibility Studyを2026年6月に開始)を通じて、ゲノム情報を診療へ還元する体制の構築を目指しています。