本シンポジウムは、亜熱帯地域に根ざした二つの異なる学術分野 ―医科学研究と海洋科学研究 ― の出会いと融合を目指すものです。医科学研究所は、1905年(明治38年)に奄美大島に設立された東京帝国大学伝染病研究所に起源を持ち、以来120年にわたり、熱帯・亜熱帯を中心とした感染症研究・霊長類研究を継続、維持してきました。一方、大気海洋研究所は、奄美周辺を流れる黒潮の観測・解析を通じて、地球規模の気候変動と海洋環境を理解する新たな研究教育プロジェクト「亜熱帯・Kuroshio研究教育拠点の形成と展開」を2021年から開始しました。
いずれの研究所も関連部局や国内外研究機関、大学等と連携して、奄美というフィールドに長年にわたり関わり、独自の知見を蓄積してきました。本シンポジウムでは、そうした蓄積を共有し、自然環境・生態系・地域社会の健康に対する包括的な理解を目指して、学際的な連携と新たな研究の萌芽を育みます。変動する気候、人の移動、そして新興感染症など現代的課題に向き合う今、海洋と医科学の知見が交差することは、持続可能な未来に向けた新たな知の創出につながると信じています。
奄美という豊かな自然と文化の中で、学術と地域、過去と未来、そして異なる分野の知が融合する機会となることを願い、広く皆さまのご参加をお待ちしております。
奄美医科学研究施設長 真下 知士