• RNAウイルスの病原性発現機構の解明
     近年エマージングウイルス感染症が次々と出現し、社会的な問題を引き起こしている。エボラ、ニパ、マールブルグなどその多くが(-)鎖・一本鎖・RNAウイルス(モノネガウイルス)に含まれ、これらの感染症は、人間社会の拡大によってこれまで接することがなかった本来の自然宿主から、動物の種を越えて伝播したことによると考えられている。しかし、種を越える機構や、強い病原性を発現する機構は、いまだに解明されていない。我々は、このウイルス群に属するモービリウイルス属の3種のウイルス(麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)や、人に対し高い致死率の脳炎を誘発するニパウイルスにおいて、cDNAクローンから感染性ウイルスを作出する『新リバースジェネティクス』を世界に先駆けて開発した。これらの実験系を用いて、ウイルス遺伝子や蛋白の機能解析、ウイルスと宿主因子の相互作用の全貌を明らかにし、ウイルスと宿主との攻防や、感染宿主域を規定する機序、病原性発現機構の解明に向けて研究している。

  • 組換えウイルスベクターの開発
     モービリウイルス属のウイルスは、その感染細胞域の広さや安全性から遺伝子治療用や癌治療用ウイルスベクターとしての可能性が期待されている。我々は遺伝子組換え技術によって、これらの目的に応用可能な新しいウイルスベクターの開発を試みている。

  • 組換えウイルスワクチンの開発
     モービリウイルス属のウイルスは、感染後終生免疫効果が持続することや、細胞性免疫誘導能が高いことから、優れたワクチンベクターとしての可能性も高いと考えられる。そこで我々は多価ワクチンの開発も行なっている。
     また、マラリア症等はWHOより6大感染症に指定されており、その被害は甚大であるが、他の原虫病と同様、未だに実用化に至った有効なワクチンはなく、その開発が待望されている。我々は新しい組換えウイルス技術を用いて、その予防法の開発研究も行っている。