醍醐チーム

[メンバー]
醍醐 弥太郎・Nguyen Minh-Hue・益田 健・新垣 雅人・藤友 崇・尾下 豪人


[研究内容]
これまでのヒトの癌研究は、限られた数の遺伝子の異常を手がかりとして、発癌機構を組み立てていく方向で進められてきた。しかしながら、近年のマイクロアレイ解析に代表されるゲノム解析的手法と質量分析技術等のプロテオミクス的手法の発達により、ゲノムワイドな遺伝子や蛋白の発現レベルの変化に基づき発癌機構の全体像をより網羅的・体系的に把握するとともに、患者ごとの癌の個性を解明する方向へとシフトしつつある。我々は当研究室で作製された(1)32,256個のヒト遺伝子を配置したcDNAマクロアレイ、(2)1200症例からなる肺癌・食道癌の組織マイクロアレイシステム、(3)各種の質量分析法等のプロテオーム解析技術、そして(4)常時1500症例以上の癌患者血清を備えた迅速血清バイオマーカー探索ELISAシステムを用いて臨床的に様々な個性を持った癌における遺伝子・蛋白発現情報の解析を行っている。これらの情報より、癌のオーダーメイド医療に応用可能な抗癌剤の感受性や癌転移に関与する遺伝子群を同定し、適切な治療方法(薬剤、放射線)を各患者に適用する遺伝子・血清診断技術の開発を行っており、さらには早期診断のための新規バイオマーカーの同定と新たな分子標的療法(低分子化合物、モノクローナル抗体・siRNA・機能阻害ペプチド)、癌ワクチン療法の開発に取り組んでおり、その成果の一部は多施設臨床試験に移行している。

図1 LCMとcDNA マイクロアレイ
上はLCMシステムにより採取した肺癌の症例である。マイクロアレイによる発現解析は炎症細胞などのコンタミネーションが問題となるが、このような方法で癌細胞を選択的に取得し、より正確な遺伝子発現解析を行っている
下はcDNAマイクロアレイシステムの原理を示しているが、異なる2つの細胞由来の遺伝子発現を一度に大量の遺伝子について解析でき、今までになかったスピードで遺伝子発現解析を行うことが可能となった。

図2 cDNAマイクロアレイによる発現解析
ヒト悪性腫瘍の発生機序の解明とその臨床応用を目的として、様々な観点からcDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析と標的分子の機能解析を行っている。これまでに、150症例以上の臨床検体(肺癌、食道癌、骨肉腫等)、50種以上の各種癌細胞株およびヌードマウスxenograftを用いた腫瘍において発現異常を認める遺伝子の解析と抗癌剤の感受性と相関する生物学的因子についての検討を行っている。また癌の遠隔臓器転移モデルや臨床検体における遺伝子発現プロファイルの解析による癌の転移機構の解明を行っている。


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