センター概要

革新的な次世代粘膜ワクチン研究開発事業

センター長・教授
石井 健

 当センターの創設者であり、前センター長の清野宏先生の後任として2019年(新元号が未定の3月29日に寄稿しております)4月よりセンター長に就任しました医科学研究所・ワクチン科学分野の石井健と申します。世界の中の、日本におけるワクチン研究の発信地として、医科学研究所・国際粘膜ワクチンセンターの研究、運営、人材育成をさらに発展させ、ワクチン研究の進化発展に貢献できるよう努力してまいる所存ですので今後とも皆様のご協力、ご指導のほどよろしくお願い致します。 皆様のご意見、ご質問はもちろん、ご寄付や共同研究なども随時受付させていただきますのでご連絡をお待ちしております。

 人類は多種多様な微生物との間に「共生と排除」という生命現象を介してともに進化を遂げている。その根幹となる免疫機構は有益な微生物とは共生を図り、有害な病原微生物には排除を試みる。抗生物質の発見、ワクチンの開発及び公衆衛生の進歩は多くの感染症の制御を可能とし、20世紀の人類の福祉と社会の進歩に大きく貢献してきました。しかし、1)薬剤耐性や易感染性宿主、院内感染等の全く新しい問題の出現、2)貧困と感染症の蔓延という悪循環を繰り返す発展途上国の状況、3)エイズ、結核、マラリアをはじめとする新興・再興感染症などにより、免疫・感染症研究は新たな対応を迫られるところとなりました。また、花粉症や食物アレルギーといったアレルギー疾患や癌も先進国を中心に深刻な問題となっています。感染症・アレルギー・癌の主要発症部位となっているのは、呼吸器、消化器、泌尿・生殖器などの粘膜組織であり、そこには柔軟且つ緻密な粘膜免疫システムが存在している事が明らかになっています。まさしく、粘膜免疫システムは「共生と排除」の場と言っても過言ではありません。「共生と排除」という視点から、正常状態から疾病形成に至る粘膜免疫システムの包括的な理解のための基礎研究と粘膜を介した人為的な免疫系の操作を可能にする基盤技術の創出が、新規の予防・治療法の開発に必要不可欠と考えられます。

 このような状況のもと、免疫研究の推進において世界の先導的役割を担っている我が国が次世代を担う病気の予防・治療戦略として「粘膜ワクチン」の開発を率先して行うことは、国際社会の中で貢献すべき重要な役割の一つと言えます。このような機運の高まりを受け、東京大学医科学研究所は、現在まで培ってきた免疫学、感染症学、癌生物学、ゲノム医科学、再生医学さらにシステム生物学などの知的技術基盤を横断的に融合する国際連携研究を推進するため、平成23年に国際粘膜ワクチン開発研究センターを設置しました。当センターでは、粘膜免疫システムによる「共生と排除」の分子・細胞・個体レベルでの理解を通して、粘膜ワクチン開発に関連する基礎研究を推進し、その成果を医療応用することで、新学術領域としての「粘膜ワクチン学」創成を目指しています。「粘膜ワクチン学」を通して次世代型ワクチン実用化研究を推進し、次世代を担う研究者育成の拠点となることを目指しています。

東京大学 東京大学 医科学研究 HanaVax