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発表論文解説

TLR9によるDNAリガンドの認識には、DNaseIIによるDNAの分解が必要である

Nature Communications 6, 5853 doi:10.1038/ncomms6853
Mei Po Chan1、恩地正浩1, 3、福井竜太郎1、川根公樹4、柴田琢磨1,2、齋藤伸一郎1、大戸梅治5、清水敏之5、Glen N. Barber6, 三宅健介1,2
1.東京大学医科学研究所感染遺伝学分野、2,システム疾患モデル研究センター自然免疫研究分野、3.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器・肝臓内科学、4. 京都産業大学総合生命科学部、5.東京大学大学院薬学系研究科 蛋白構造生物学教室、6. Department of Cell Biology and Sylvester Comprehensive Cancer Center, University of Miami Miller School of Medicine
DNase II-dependent DNA digestion is required for DNA sensing by TLR9

Toll-like receptor9 (TLR9)は一本鎖DNAを認識して、免疫応答を惹起する自然免疫系の担当分子です。TLR9が認識するDNAは細菌やウイルスなどの病原体に由来するものの他に、宿主に由来するものも存在します。したがって、TLR9のDNA認識メカニズムの解明は感染症や自己免疫疾患などを理解する上で、重要な研究課題であると考えられています。
今回我々は、DNAを分解する酵素であるDNaseIIが、TLR9によるDNA認識に関わっていることを発見いたしました。DNaseIIを欠損したマウスから誘導した樹状細胞は、人工的なTLR9リガンドとして知られているCpG-ODNのうち、CpG-Aと呼ばれるタイプのリガンドへの応答性が減弱します。一方、CpG-Bと呼ばれるタイプのリガンドへの応答性に変化は見られませんでした。これらのCpG-ODNはどちらも20塩基程度のDNAですが、CpG-Aは中央部がDNaseIIによって切断されるような構造を持っています。DNaseIIが欠損するとCpG-Aが切断されなくなる可能性を考え、試験管内でDNaseIIによるCpG-Aの切断実験を行ったところ、概ね半分程度の長さになることがわかりました。そこで、11塩基から13塩基程度の長さを持つCpG-Aの3'側で樹状細胞を刺激したところ、DNaseIIの有無に関わらずTLR9の応答性を見ることができました。CpG-Aは複合体を形成しやすいことが知られているため、そのままではTLR9に認識されづらいと予想されます。以上の結果から、DNaseIIにはDNAリガンドを切断することで、TLR9に認識されやすい構造にする働きがあると結論づけました。
さらに、DNaseIIはCpG-ODNのような人工的なリガンドだけではなく、細菌由来のDNAといった天然のリガンドに対するTLR9の応答にも関わっていることが証明されました。今後はDNaseIIがTLR9の応答に与える機能を検討していくことで、TLR9が影響を及ぼす感染症や、ワクチンのアジュバント開発などにおいて新たな知見が得られると期待されます。