東京大学医科学研究所

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発表論文解説

自然免疫応答を活性化する新たな自己RNAを同定 —自己免疫疾患、炎症性疾患の原因解明、治療薬開発に期待—

PNAS https://doi.org/10.1073/pnas.1915326116
Hideo Negishi, Nobuyasu Endo, Yuki Nakajima, Tatsuaki Nishiyama, Yuichiro Tabunoki, Junko Nishio, Ryuji Koshiba, Atsushi Matsuda, Kosuke Matsuki, Tomohisa Okamura, Takako Negishi-Koga, Takeshi Ichinohe, Shunji Takemura, Hiroyuki Ishiwata, Shun-ichiro Iemura, Tohru Natsume, Takaya Abe, Hiroshi Kiyonari, Takeshi Doi, Sho Hangai, Hideyuki Yanai, Keishi Fujio, Kazuhiko Yamamoto and Tadatsugu Taniguchi*
Identification of U11snRNA as an endogenous agonist of TLR7-mediated immune pathogenesis

東京大学の谷口維紹名誉教授、生産技術研究所 根岸英雄特任助教(研究当時、現 医科学研究所 特任講師 )らの研究グループは、自己の細胞に由来し、生体に不利益な自然免疫応答を活性化するRNAを同定しました。さまざまな自己免疫疾患や炎症性疾患にRNA受容体を介した自然免疫応答が関与することが知られていましたが、その原因となるRNAリガンドについては良く分かっていませんでした。
本研究グループは、自然免疫応答の制御機構の解明と制御法の開発を推進しており、その中で、RNAに直接結合し、そのRNA受容体リガンドとしての活性を阻害する低分子化合物を開発することに成功しました。この化合物がマウスモデルで自己免疫疾患の病態を抑制できることを見出したため、さらに化合物に結合する内在性のRNAを網羅的に同定したところ、それらの中から自己免疫疾患患者の血清中で、病気の程度と相関して増加するRNAとして、U11snRNAという低分子RNAを同定しました。興味深いことに、このU11snRNAはこれまで知られていた自己に由来するRNAと比較して、RNA受容体に対する強いリガンド活性を有することが判明しました。また、本研究グループはU11snRNAの強いリガンド活性のメカニズムを解明し、その原理を元に、RNA受容体を強力に活性化するアゴニスト、および抑制アンタゴニストの作成にもそれぞれ成功しました。
これらの発見、成果は、RNA受容体が関与するさまざまな疾患の発症や増悪のメカニズム解明に繋がることが期待されます。また、化合物やアンタゴニストは、RNA受容体の関与する疾患の治療薬として、アゴニストは感染症やがんに対するワクチンの効果を高めるアジュバントとしての開発がそれぞれ期待されます。
本研究は、主に東京大学生産技術研究所(谷口維紹研究室(研究当時))および先端科学技術研究センターにて行われたもので、山本一彦チームリーダー(理化学研究所生命医科学研 究センター)、藤尾圭志教授(東京大学医学部付属病院) 、興和株式会社との共同で行ったものです。
本研究成果は、2019年11月4日(米国東部時間)に米国科学誌「PNAS」のオンライン速報版で公開されました。