エボラ出血熱の重症化メカニズムの解明ならびに予後を予測するためのバイオマーカーを同定
エボラ出血熱の重症化メカニズムの解明ならびに予後を予測するためのバイオマーカーを同定
東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループは、エボラ出血熱の重症化メカニズムの一端を解明し、さらに重症化を予測しうるバイオマーカーを同定しました。
エボラ出血熱は、エボラウイルス感染によって起こる全身感染症です。致死率が非常に高く、効果的な治療薬やワクチンがないため、公衆衛生上非常に深刻な問題となっています。2013年に西アフリカ諸国で発生したエボラ出血熱は、過去最大の流行を引き起こしました。欧米諸国でも、流行地から帰国した医療関係者を中心に、十数名の感染者が出ました。したがって、今後のエボラ出血熱の流行に備え、本感染症の病原性発現機構を詳細に解析し治療・予防法を確立することは、喫緊の課題です。
本研究グループは、西アフリカのシエラレオネ共和国において、エボラ患者から採取した血液サンプルを用いて、トランスクリプトーム、メタボロミクス、リピドミクス、プロテオミクスなどのマルチオミックス(各種網羅的)解析を行いました。エボラウイルス感染後に、死亡した患者と回復した患者における宿主応答を比較解析したところ、エボラ重症患者(死亡者)の体内で起こる組織障害には、膵酵素や、好中球によって誘起された免疫系の異常反応が関与することが示され、エボラ出血熱の重症化メカニズムの一端が明らかとなりました。さらに重症患者において特異的な発現パターンを示す宿主因子が同定され、これらの因子は病気の帰結を評価しうるバイオマーカーとして有望であることが分かりました。本研究成果は、エボラ出血熱の制圧に向けた大きな一歩となることが期待されます。
本研究成果は、2017年11月16日(米国東部時間 午後12時)、米国科学雑誌「Cell Host & Microbe」のオンライン速報版で公開されます。
なお本研究は、東京大学、米国ウィスコンシン大学、シエラレオネ大学、米国パシフィック・ノースウェスト国立研究所、米国マウントサイナイ大学が共同で行ったものです。本研究成果は、日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業、文部科学省新学術領域研究などの一環として得られました。